トランプ政権の科学技術諮問会議共同議長デイヴィッド・サックス氏は6月14日、米政府がClaude Fable 5のジェイルブレイクについてAnthropicに警告したにもかかわらず、CEO・ダリオ・アモデイ氏が修正を拒否したとXに投稿した。政府はその前日(6月13日)にFable 5とMythos 5の全世界での提供停止を命令しており、サックス氏は今回の輸出規制は「不本意ながら」発動したものだと説明している。
ジェイルブレイク発覚から輸出規制発動までの経緯
Tom's Hardwareによると、サックス氏はXへの投稿で次のように主張している。Anthropicと米政府双方の「信頼できるパートナー」がFable 5のテスト中にジェイルブレイクを発見した。このジェイルブレイクは、消費者向けのFableモデルと、その基盤となるMythosが持つ制限なしのサイバー能力を分離するガードレールを迂回するものだったという。
政府はアモデイ氏に対し、バイパスの修正またはモデルの提供停止を求めたが、アモデイ氏はこれを断ったとサックス氏は主張している。サックス氏はXへの投稿で「Anthropicは安全性よりも消費者向けモデルの稼働継続を優先した」と批判し、「Mythosをサイバー兵器として規制するよう自ら政府に働きかけてきた"安全第一"ラボとしての立場と矛盾している」と述べた。
その上で、「ジェイルブレイクが修正されれば規制を解除したい。ボールはAnthropicのコートにある」とも記している。
Anthropicの反論——「数億人のユーザーに影響を与えるべきでない」
Anthropicの公式見解は、このバイパスは「狭く、普遍的なものではない」というものだ。同社の説明によれば、問題の操作はモデルにコードベースを読ませてソフトウェアの欠陥を特定させる行為に相当し、OpenAIのGPT-5.5を含む他の公開モデルでも同様の結果が得られるという。同社は「数億人が利用するモデルを、狭いジェイルブレイクのために回収すべきという考えには同意しない」との立場を示している。
これに対しサックス氏は、サイバー兵器の操作を可能にするバイパスを「深刻でない」と定義することは困難だと反論している。Anthropicが自らMythosの規制を求めてきた経緯を踏まえれば、この主張は一貫性に欠けるとする批判は避けられない構図だ。
AmazonとSemafor報道——中国系グループによるMythosアクセス疑惑も
Semaforは、ホワイトハウスに近い人物の話として、AmazonがこのジェイルブレイクをAmerican政府に通報し、Amazon CEO・アンディ・ジャシー氏が政権と連絡を取り合っていたと報じている。AnthropicはAmazonから数十億ドルの投資を受け、クラウドコンピューティングの大部分をAmazonに依存しているが、Amazonの広報担当者はSemaforに「政府はセキュリティリスクについて助言を求めることがあるが、その会話の内容は公開しない」と述べるにとどめ、詳細を確認しなかった。
Semaforはさらに、事情に詳しい人物の話として、ホワイトハウスが中国に関係するグループによるMythosへのアクセスを疑っており、モデルのリバースエンジニアリングや知識蒸留(ディスティレーション)への懸念が政権の判断に影響した可能性があると報じている。これに対しAnthropicの広報担当者は「ホワイトハウスはFableのジェイルブレイクをめぐる会話で、中国のMythosへのアクセスについて言及したことはない」と述べ、中国国内からの自社製品へのアクセスはブロックしていると説明した。
4月にも不正アクセス——繰り返されるMythosの流出リスク
今回は初めての事態ではない。4月にもデータ侵害から得た情報を利用した無許可の第三者が、制限付きのMythosモデルにアクセスする事件がすでに発生していた。
サックス氏は、今回の輸出規制とAnthropicが抱える政府との過去の対立(Mythosの自律型兵器への利用をめぐる国防総省への提訴、州AI規制の連邦法による無効化への反対)は無関係だと主張している。ただし、この主張の真偽は現時点では確認されていない。
現時点での焦点はAnthropicがジェイルブレイクの修正に踏み切るかどうかだ。サックス氏は修正完了を条件とした規制解除の意向を示しているが、Anthropicが「狭いジェイルブレイク」という立場を維持し続けるのか、対応策を講じるのかは明らかにされていない。続報を待つ必要がある。
Q&A
Q. Claude Fable 5とClaude Mythosはどのような関係か? Fable 5は、Mythosクラスモデルをベースにした消費者向けの商用モデルだ。Mythosは制限なしのサイバー能力を持つ上位モデルであり、米政府はこれをサイバー兵器相当として扱うべきだと主張している。今回のジェイルブレイクはFableのガードレールを迂回し、Mythosの能力にアクセスできるというものだ。
Q. 輸出規制はいつ解除されるのか? サックス氏はジェイルブレイクが修正されれば解除したいと述べているが、具体的なタイムラインは示されていない。解除の時期はAnthropicの対応次第であり、現時点では不明だ。
Q. 今回の措置は日本のAnthropicユーザーにも影響するか? 政府が命令したのはFable 5とMythos 5の「全世界での」提供停止であるため、日本を含む国外のユーザーにも影響が及んでいる可能性がある。ただし、具体的な地域別の対応状況についてはソース記事では言及されていない。