最大30%だったApp Storeのデジタル商品手数料が、ブラジルでは最大21%まで下がります。さらに、App Storeを経由しない代替アプリマーケットプレイスや外部決済も解禁され、iPhoneユーザーにとってはアプリの選択肢や価格に変化が及ぶ可能性が出てきました。ただし、App Storeを回避しても5%の「Core Technology Commission」は残ります。
Appleは、ブラジルの開発者がiPhone向けアプリを代替アプリマーケットプレイスを通じて配信し、サードパーティの決済プラットフォームを利用できるようにすると発表しました。これはブラジルの競争当局による規制対応の一環で、iOS 26.5以降で利用できます。
何が解禁されたのか——代替ストアと外部決済の中身
代替アプリマーケットプレイスはAppleによる認可が必要で、継続的な要件を満たす必要があります。App Store経由で配信を続けるアプリでも、開発者はアプリ内に代替の決済処理手段を組み込んだり、ウェブサイトへ誘導して取引を完了させたりできます。
Appleはすでに同様の代替ストア・サードパーティ決済をEU、日本、韓国で認めており、英国とオーストラリアでも同種の規制により対応を迫られる可能性があると見られています。
最大30%から最大21%へ——手数料はこう変わる
ブラジルのApp Storeで配信されるアプリのデジタル商品・サービスに対する手数料は、これまでの最大30%から最大21%へと引き下げられます。多くの開発者は、Small Business Program、Video Partner Program、Mini Apps Partner Programなどを通じて、10%まで下がる手数料の対象となります。App Storeのアプリ内課金システムを利用する場合は、追加で5%の手数料がかかります。
主要な手数料は以下のとおりです。表中の「Core Technology Commission」は、App Store外で配信されるアプリに課される5%の手数料で、Appleは「開発者がiOSユーザーにアプリを提供することを可能にするツール、テクノロジー、サービスへの対価」と説明しています。
| 配信・決済形態 | 手数料 |
|---|---|
| App Store配信+アプリ内課金 | 最大21%+5% |
| App Storeアプリから外部サイトへ誘導した決済 | 15%(条件次第で10%) |
| App Store外で配信されるアプリ(デジタル商品・有料アプリ) | 5%(Core Technology Commission) |
ユーザーにとっての意味——アプリは安くなる?選択肢は増える?
手数料が最大30%から最大21%へ下がること、そして外部決済やSmall Business Program等で実効負担がさらに下がる余地があることは、開発者がアプリ価格やサブスクリプション料金を見直す動機につながり得ます。代替マーケットプレイスの解禁により、App Store以外からアプリを入手する選択肢も生まれます。一方で、5%のCore Technology Commissionが残るため、App Store回避が即「手数料ゼロ」にはなりません。
プライバシー・安全性への懸念とセーフガード
Appleは今回の変更について、子どもを含むユーザーに対してプライバシーとセキュリティ上のリスクをもたらすとの立場を示しています。リスク軽減のため、iOSアプリの公証(notarization)プロセス、アプリマーケットプレイスの認可プロセス、そして18歳未満のユーザーに対する外部リンク・代替決済の制限といったセーフガードを導入したとしています。
開発者が確認すべきスケジュール
2026年7月6日までに、Apple Developer Programの現在のすべてのメンバーは、ブラジルでのこれらのオプションに関する新条項を含む更新版Apple Developer Program License Agreementに同意する必要があります。Appleはブラジルの開発者向けに追加の詳細を記載した新しいページも自社ウェブサイトに公開しました。
ブラジル市場でアプリを展開する開発者は、手数料引き下げで収益改善の余地が広がる一方、代替配信を選んでも5%のCore Technology Commissionが残る点を踏まえて事業判断を進めることになります。期限が迫っているため、対象となる開発者はライセンス契約の更新内容を早めに確認しておくのが安全です。
ブラジルCADEの和解に至るまで——MercadoLibreの申立てから3年越しの決着
今回の解禁は、ブラジル競争当局CADEとAppleが2025年12月23日に承認したTerm of Commitment to Cease(TCC、停止確約書)に基づく対応です。合意の有効期間は3年間とされています。
申立てから和解までの主な流れ
- 2022年12月、Mercado LivreがCADEに対しAppleの市場支配的地位濫用を申し立て、IAPの強制利用やanti-steering条項を問題視しています
- 2025年中盤、CADEが代替配信と外部決済リンクをAppleに求める仮処分を支持し、技術部門もApple不利の勧告を提示しています
- 2025年12月23日、CADEの理事会がTCCを承認し、3年間の合意として成立しています
申立てが2022年12月、和解承認が2025年12月であり、iOS 26.5での運用開始は3年越しの規制対応が形になる局面に位置付けられます。
既存対応国との比較——EU・日本との制度差から見えるブラジルの位置付け
代替配信・外部決済の解禁はEU・日本ですでに先行しており、各地域で手数料体系の設計が異なっています。
| 地域 | 制度・施行 | 手数料の特徴 |
|---|---|---|
| EU | DMA対応、Core Technology Feeを廃止し5%のCore Technology Commissionへ移行 | デジタル商品・サービス収益の5%が課金される収益連動型 |
| 日本 | Mobile Software Competition Act(MSCA)が2025年12月18日施行 | EUのStore Services Tier 2(15〜20%)に類似、Tier 1(10〜12%)は選択不可 |
EUではCore Technology Feeを廃止し、デジタル商品・サービス収益の5%を徴収するCore Technology Commissionへと組み替えた点が大きな転換となっています。日本はEUより階層の選択肢が狭く、Tier 1の10〜12%を選べないぶん総額負担が重くなる構造です。ブラジルの最大21%+5%という設計は、EU・日本の先行事例と並ぶ三例目の地域別カスタマイズとして位置付けられます。
Q&A
Q. 日本のApp Storeにも今回の変更は影響しますか? 今回の発表はブラジル市場を対象とした規制対応です。日本ではすでに代替アプリストア・サードパーティ決済の仕組みが認められており、今回の発表で日本のApp Storeルールが直接変わるわけではありません。
Q. ユーザーが使うiPhoneアプリの価格は下がりますか? 手数料引き下げが価格へどう反映されるかは各開発者の判断次第です。手数料負担が下がるため、サブスクリプション料金やアプリ価格を見直す開発者が出てくる可能性はあります。
Q. いつから利用できますか? iOS 26.5以降で利用可能です。開発者は2026年7月6日までに更新版のApple Developer Program License Agreementへ同意する必要があります。