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Googleが反トラスト判決に控訴——「Appleは公正に選んだ」、AI企業へのデータ共有除外も要求

GadgetDrop 編集部7
Googleが反トラスト判決に控訴——「Appleは公正に選んだ」、AI企業へのデータ共有除外も要求

年間で数十億ドル規模ともされるApple-Google検索契約、そして2026年2月3日に発効済みの是正措置——この2つを揺るがす動きが表面化しました。Googleは、iPhoneのデフォルト検索エンジンを巡る2024年の反トラスト判決に対し、米コロンビア特別区巡回区控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the D.C. Circuit)に控訴。提出書面の中でGoogleは、Appleが自社の検索エンジンを採用したのは「公正な競争(fair and square)」の結果だと強調し、是正措置の全面的な見直しを求めています。

「公正な競争の結果」と主張するGoogleの論理

Googleは控訴申立書のなかで、自社の検索における成功は「メリットに基づく競争」の結果であり、地裁の認定は誤りだと主張しています。革新性・投資・そして「ただ、より懸命に働いた(just working harder)」ことで競合を引き離したのであって、Apple・Mozillaが他社の提案を選ぶ機会を奪ったわけではないとしています。

書面では「Googleは『競争プロセスを害する(harm the competitive process)』ような行為は一切していない」とも記述されました。さらに、契約がなかったとしてもGoogleの顧客が競合に乗り換えた可能性を示す証拠は存在しない、と踏み込んでいます。Apple側についても、Safariの設定でユーザーが他のブラウザ・検索エンジンを選択できるようになっており、Appleがあえてデフォルトに選んだのは「健全なビジネス上の理由(sound business reasons)」によるものだと指摘しています。

是正措置の撤回とAI企業除外を要求

Googleは控訴審で、地裁が課した一連の是正措置の取り消しを求めています。具体的には、検索データの共有、ユーザー操作に関する情報提供、競合他社への検索結果のシンジケーション提供といった義務です。

特に注目されるのが、OpenAIをはじめとする生成AI企業をデータ共有の対象から除外するよう求めている点です。GoogleはAI製品が「DoJ(米司法省)の訴状が対象とする期間中には存在すらしていなかった(did not even exist)」と指摘し、これらの企業に検索データを渡す合理性はないと主張しています。さらに、AI企業について「Googleの成功にただ乗りする必要などまったくないほど、人類史上のいかなる技術にも劣らないほど華々しく成功している」とも記述しました。

数十億ドル規模のApple-Google契約と未着手の是正

GoogleがSafariのデフォルト検索になるためにAppleに支払っている金額は、年間で数十億ドル規模に達するとされており、これがDoJの反トラスト訴訟の中核論点でした。最終的に裁判所は、独占的契約は禁じたものの、AppleにGoogleを検索オプションとして提示する形での支払い自体は禁じませんでした。

DoJはChromeブラウザの売却、さらにAndroid OSの切り離しまで求めていましたが、いずれも実施されていません。

是正措置は2026年2月3日に発効しましたが、実装の詳細が詰められていないため、Googleにはまだデータ提供の義務が発生していません。裁判官が設置した5人の技術委員会(Technical Committee)も、ライセンス条件・プライバシー保護策・どの企業を「競合」とみなすかの基準のいずれも、まだ示していない状況です。

口頭弁論すら未定──決着は2026年後半以降に持ち越し

控訴審の口頭弁論はまだ日程が決まっておらず、続報が出るのは2026年後半から2027年初頭にかけてになる公算が大きい状況です。それまでは、Googleが検索データを実際にどこまで競合と共有することになるのか、AI企業がそこに含まれるのか、いずれも宙に浮いたままとなります。

iPhoneユーザーにとっての実感としては、Safariのデフォルト検索が当面Googleのまま据え置かれる一方、検索結果の裏側でデータが競合や生成AI企業へどこまで流れるかは、控訴審と技術委員会の議論次第で大きく振れる可能性があります。実際にiPhoneのSafariで検索体験が変わるタイミングが訪れるかは、続報を待つほかありません。

欧州DMAでも並行する「AI企業へのデータ開放」論争

米国の控訴審と並行して、欧州でも同じ論点が走っています。欧州委員会は2026年1月27日、デジタル市場法(DMA)第6条11項に基づき、Googleが検索データを競合検索エンジンに共有する方法を定める仕様策定手続きを開始しました。

コンプライアンス期限と制裁リスク

Googleのコンプライアンス期限は2026年7月27日に設定されており、達成できなければDMA違反として世界年間売上の最大10%にあたる制裁金が課される可能性があります。

  • 期限: 2026年7月27日
  • 制裁上限: 世界年間売上の最大10%
  • 受領対象に含まれる方向の事業者: OpenAI、Anthropic等のAIチャットボット提供事業者

EUの提案ではOpenAIやAnthropicといったAIチャットボット提供事業者もデータ受領対象に含まれる方向で議論が進んでおり、Googleはこの動きに強く反発しています。同社は「OpenAIがDMA起草時に想定されなかった形でデータを取得しようとしている」と主張しており、米欧で同時並行する論戦の帰結は、生成AI事業者が検索データへアクセスできるかどうかの国際的なルール形成に直結する局面です。

DOJと州側も「逆方向の控訴」──Chrome売却を再び要求

控訴は片方向ではありません。DOJと多数の州は2026年2月3日、Mehta判事の是正措置判決に対するクロスアピールを行い、より強い構造的是正を求めています。

当事者主な主張
Googleデータ共有義務の取り消し、AI企業の対象除外
DOJ・州側Chrome売却拒否やAppleデフォルト契約存続の判断を争点化

DOJ側の控訴は、Chrome売却を認めなかった判断や、Appleとのデフォルト検索契約を存続させた判断を主に争点化する見通しです。背景にある金額規模も無視できません。Apple向けの支払いは年間200億ドル超とされ、競合を主要な流通経路から締め出していたと位置づけられてきました。2025年9月に下されたMehta判事の是正命令は、検索・Chrome・Googleアシスタント・Geminiアプリ配布についての排他的契約を禁じる内容でしたが、Chrome売却までは命じませんでした。両方向からの控訴により、現行の是正の枠組み自体が今後揺れ動く可能性があります。

Q&A

Q. 今回の控訴で、iPhoneのSafariのデフォルト検索エンジンはすぐに変わりますか? 変わりません。裁判所は独占的契約こそ禁じたものの、AppleがGoogleを検索オプションとして採用し続けること自体は認めており、控訴審の結論が出るまで現状の枠組みは維持される見通しです。

Q. OpenAIなどのAI企業はGoogleの検索データを受け取れる可能性があるのですか? 是正措置上は競合への検索データ共有が含まれていますが、Googleは控訴審でAI企業を対象から除外するよう求めています。さらに技術委員会が「競合」の定義をまだ示していないため、現時点では誰がデータを受け取れるのかも確定していません。

Q. もし控訴審でAI企業の除外が認められたら、何が変わるのですか? OpenAIなど生成AI企業はGoogleの検索データやユーザー操作情報を受け取れなくなり、AI検索体験の改善に活かせる外部データの選択肢が狭まる可能性があります。一方で従来型の検索エンジン事業者は引き続きデータ共有の対象に残るため、競合構図はAI領域と検索領域で分かれて進む形になりそうです。

出典

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GadgetDrop 編集部

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