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HDDサスペンション部品で価格カルテル疑惑——TDK・NHK Springに米国集団訴訟、Seagate・WD・Toshibaの価格に影響か

GadgetDrop 編集部9
HDDサスペンション部品で価格カルテル疑惑——TDK・NHK Springに米国集団訴訟、Seagate・WD・Toshibaの価格に影響か

HDD価格を約13年間(2003年1月〜2016年12月31日)にわたってつり上げた疑い——世界HDDの97%に搭載される部品を製造するTDKとNHK Spring(日本発条)関連企業が、米国で集団訴訟を起こされました。Tom's Hardwareによれば、この価格カルテルがSeagate・Western Digital・Toshibaの3大HDDブランドの価格上昇を招いた疑いがあるとされています。米国の販売業者・エンドユーザーが補償対象になり得る一方、集団からの離脱期限は2026年8月23日に設定されています。

結論先出し——今すぐ知っておくべき3点

項目内容
離脱期限2026年8月23日(専用ウェブサイトで手続き)
補償対象米国の販売業者・エンドユーザー(日本在住の購入者は対象外)
対象期間2003年1月〜2016年12月31日(約13年間)にHDDまたはHDD搭載PCを購入

日本在住の読者にとっては、直接の補償対象にはなりません。ただし、過去13年間のHDD価格に人為的な押し上げがあった可能性が裁判で争われるという点で、当時HDDを購入したすべてのユーザーにとって無関係ではない話題です。

被告はTDKとNHK Spring——世界HDDの97%を支える部品メーカー

訴状はカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提出されました。被告は2つのグループに分かれ、ひとつはTDK Corporation関連、もうひとつはNHK Spring(日本発条)関連の企業群です。

両グループが製造する「サスペンションアセンブリ」は、HDDの読み書きヘッド(HDD内部で見られる「針」の先端部分)を物理的に動かす重要部品で、製造・機能の両面で極めて高い精度が要求されます。現代のHDDプラッタの磁気密度を考えると、その精度要求は一層シビアになります。この部品は**世界のHDDの97%**に搭載されていると報じられており、Seagate・Western Digital・Toshibaなど主要HDDブランドのほぼ全てが、間接的に今回の訴訟の射程に入る構図です。

価格操作が行われたとされる期間は、2003年1月から2016年12月31日までの約13年間に及びます。この期間中に上昇したHDDの製造コストが、最終的にエンドユーザーへ転嫁されたとされています。

カナダ訴訟との関係——2019年提訴・2022年に控訴棄却

今回の米国訴訟は、2019年にカナダで提起された同種の集団訴訟を直接踏襲したかたちです。カナダ側ではすでに集団訴訟としての認定が下りており、2022年にはこれに対する控訴も棄却されています。

ただし、カナダで先行している事実は米国訴訟の勝訴を保証するものではありません。Tom's Hardwareも、プレスリリース自体に「訴訟の成功は保証されない」旨が明記されている点に触れており、現段階では「肯定的な兆候」にとどまるとしています。米国側ではまだ公判期日も設定されていません。

項目内容
提訴先カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所
被告グループTDK Corporation関連/NHK Spring(日本発条)関連
対象期間2003年1月〜2016年12月31日(約13年間)
対象部品の市場シェア世界のHDDの97%(と報じられている)
影響を受けるブランドSeagate、Western Digital、Toshiba
カナダ先行訴訟2019年提訴、2022年に控訴棄却(集団訴訟として認定済み)
公判期日未設定
離脱期限2026年8月23日

米国ユーザーが取れる選択肢と「2026年8月23日の離脱期限」

集団訴訟の常として、対象期間中(2003年1月〜2016年12月31日)にHDD(またはHDDを搭載したPC)を購入した米国の消費者・販売業者には、2つの選択肢が用意されています。集団訴訟に残って和解金や補償の分配を待つか、集団から離脱して個別に法的措置を取るか、です。

離脱のための専用ウェブサイトが用意されており、離脱の意思表示は2026年8月23日まで可能です。期限を過ぎると、自動的に集団の一員として扱われる流れになる点に注意が必要です。

カルテルが認定されたら何が覆るか

今回の訴訟が訴状通りの事実認定に至った場合、影響は単発の和解金にとどまらない可能性があります。サスペンションアセンブリは**世界HDDの97%**に搭載されている部品とされており、もし約13年間に及ぶ価格カルテルが裁判所で認められれば、2003年〜2016年のHDD価格そのものに「人為的な押し上げ」があった——という前提が公式に成立することになります。

ストレージ市場全体ではHDD以外の領域でも価格動向が活発に動いている状況ですが、大容量データ用ストレージとしてのHDDの存在感は依然として大きいままです。今回の訴訟は古い期間を対象としたものですが、ストレージ業界のサプライチェーンが少数の上流部品メーカー(97%という極めて高いシェアを2社グループが占める構造)に依存していることを改めて浮き彫りにしたとも言えます。

なお、本件は提訴段階の情報であり、被告側企業がカルテルの事実を認めたわけではありません。「allegedly(疑いがある)」という表現で報じられている段階であり、最終的な事実認定は裁判の進行を待つ必要があります。現時点では「米国でHDD関連の大型訴訟が動き始めた」という事実関係を押さえつつ、続報を待つのが妥当です。

NHKは別件で有罪を認めていた——2026年1月に第9巡回区が判断を一部覆す

今回の集団訴訟の背景には、刑事手続きでの重要な前例があります。NHKは別の連邦刑事手続きにおいて、米国およびその他の国・地域で販売されたサスペンションアセンブリの価格を競合他社と共謀して操作したことについて有罪を認めています。

この刑事手続きでの有罪答弁を受けて、Seagate自身も民事の反トラスト請求を起こしていましたが、2026年に大きな進展がありました。

第9巡回区控訴裁判所の2026年1月判決

2026年1月、第9巡回区控訴裁判所は、Seagate TechnologiesのNHK Springに対する反トラスト請求の一部を復活させ、外国法人が国外で取引を実行していたとしても、本件の共謀疑惑には米国反トラスト法が適用され得ると判断しました。これに先立ち地裁の2023年5月15日付け命令では、Seagate ThailandとSeagate Singaporeが購入したサスペンションの大半は一度も米国に入っていないとして「完全な国外取引」にあたり、シャーマン法の救済対象外と判断されていました。しかしSeagateの海外サスペンション購入の約3分の1は、最終的に完成HDDの一部として米国に流入していた点が控訴審で重視された格好です。

AI需要で2026年のHDDはすでに売り切れ——価格は5か月で約50%上昇

サスペンション部品の供給構造を改めて意識させる出来事として、2026年のHDD市場では深刻な需給逼迫が発生しています。

項目内容
WD・Seagateの2026年生産AIデータセンター向けに完売
消費者向け価格上昇幅5か月で約50%
4TB WD Blueの価格推移$67〜85 → $99
2025年Q4の契約価格前期比+4%(過去8四半期で最大)

Western DigitalとSeagateは2026年のHDD生産能力をすべてAIデータセンター向けに販売済みと公表しており、他の顧客向けの在庫は残されていません。Western DigitalのCEO Irving Tan氏は第2四半期決算電話会議で「2026年通年でほぼ売り切れ」と述べ、上位7顧客から確定発注を受けていることを明らかにしました。消費者向けHDD価格は5か月で約50%上昇しており、4TB WD Blueは以前の$67〜85から$99になっています。供給契約は長期化しており、長期供給契約はすでに2027年・2028年まで延長されているため、当面消費者向けの緩和は見込みにくい状況です。DigiTimesによれば2025年Q4の契約価格交渉ではHDD価格が前期比約4%上昇しており、過去8四半期で最大の上げ幅となっています。

Q&A

Q. 自分が対象になるかはどう判断すればよいですか? 今回の訴訟は米国の販売業者・エンドユーザーが対象です。2003年1月〜2016年12月31日の期間にHDD単体、もしくはHDD搭載PCを米国内で購入した人が含まれる可能性があります。日本在住の購入者は基本的に対象外です。離脱手続き用のウェブサイトが用意されており、期限は2026年8月23日です。

Q. SeagateやWestern Digitalが訴えられているのですか? いいえ、直接の被告はTDK CorporationとNHK Springのグループで、HDDメーカー自体は被告ではありません。そのため、SeagateやWDが消費者向けの返金窓口を設ける性質の訴訟ではない点に注意が必要です。ただし、これらが製造するサスペンションアセンブリは**世界HDDの97%**に使われているとされ、結果としてSeagate・Western Digital・Toshibaのドライブ価格に波及した疑いが指摘されています。

Q. すでにカナダで認められているなら米国でも勝訴は確実ですか? いいえ。カナダでは2019年に集団訴訟が提起され、その後集団訴訟としての認定が下り、2022年には控訴も棄却されています。しかしこれは米国訴訟の成功を保証するものではありません。プレスリリース自体も「訴訟の成功は保証されない」と明記しており、米国側ではまだ公判期日も設定されていない段階です。

出典

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