電話番号、メールアドレス、自宅住所、社会保障番号——これらの個人情報は、データブローカーによって売買され、数百ものブローカーのデータベースに分散して蓄積されていると9to5Macは報じています。Appleのプライバシー保護機能は一部の追跡を防げますが、すでに収集・拡散された情報を消すことはできません。9to5Macが紹介しているのが、データブローカーへの削除請求を自動化するサービス「Incogni」です。
データブローカーという「見えない産業」
データブローカーは、ポイントカードの利用履歴、公的記録、SNS投稿など、オンライン上のあらゆる情報を吸い上げて個人プロファイルを構築し、マーケター・雇用主・大家、さらには犯罪者にまで売却していると報じられています。許可を得ることも、本人に通知することもなく取引が行われている点を9to5Macは指摘しています。
Appleのプライバシー機能は今後の追跡を抑える助けにはなりますが、長年にわたって収集され、数百ものブローカーのデータベースに拡散した情報を取り消すことはできません。利用者は法律上、削除を要求する権利を持ちますが、実際に各社を一つずつ追跡してオプトアウト手続きを行うには「数か月のフルタイム作業」が必要になると指摘されています。各社の手続きは意図的に分かりにくく作られており、一度削除しても再びデータが戻ってくる「いたちごっこ」になる点も課題です。
250社超のブローカーに自動で削除請求——Incogniの仕組み
Incogniは、VPNサービスで知られるSurfsharkチームが開発した個人情報削除サービスです。250社を超えるデータブローカーに対して自動的に連絡を取り、ユーザーの情報を削除するよう要求します。
各国のプライバシー法を活用している点が特徴で、対応範囲は以下のとおりです。
- 欧州: GDPR
- 米カリフォルニア州: CCPA
- 対応地域: 米国・カナダ・英国・EU・スイス
ダッシュボードでは、自分の情報が含まれている可能性のあるデータベース数、送信済みの削除請求件数、完了済み・進行中の案件をリアルタイムで確認できます。
データ削除で得られる実利
ブローカーのデータベースから情報が消えることで、以下のような効果が期待できると9to5Macは説明しています。
| 変化 | 内容 |
|---|---|
| 迷惑電話の減少 | 電話番号が売買されなくなることでロボコール・スパムSMSが減る |
| 詐欺リスクの低下 | 個人情報詐欺の犯人はブローカーサイトから情報を得るケースが多い |
| 住所のプライバシー | ストーカーや嫌がらせ目的の人物に住所を特定されにくくなる |
| クレジット情報の保護 | データ露出が減ることで個人情報窃盗リスクが下がる |
9to5Mac読者向けの特別価格——プラン早見表
Incogniには個人向けプランと、本人に加えて最大4人まで追加できる(本人を含めて最大5人で利用できる)ファミリープランがあります。さらに上位の「Unlimited」プランでは、標準的なデータブローカー以外のサイトに対してもカスタム削除請求が可能で、専任のプライバシーエージェントが対応します。ただしSNSプラットフォーム、政府の公的記録、フォーラムは対象外とされています。
| プラン | 価格 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 月額スタンダード | $16.58(約2,500円) | まず短期間試したい個人 |
| 月額ファミリー | $32.98(約5,000円) | 家族でまず試したい場合 |
| 年額スタンダード | $99.48(約1万5千円) | 長期的に個人で利用 |
| 年額ファミリー | $197.88(約3万円) | 本人含め最大5人で長期利用 |
| 年額スタンダードUnlimited | $179.99(約2万7千円) | ブローカー以外のサイトにも対応したい個人 |
| 年額ファミリーUnlimited | $359.88(約5万4千円) | 家族で広範な削除請求が必要な場合 |
決済時にクーポンコード「9TO5MAC」を入力することで適用されます。
なお、9to5Macが案内している対応地域は米国・カナダ・英国・EU・スイスです。利用を検討する際は、自身の居住地が対応範囲に含まれているかを公式サイトで確認することをおすすめします。
第三者監査と対応範囲の拡大——2026年版Incogniのアップデート
元記事では「250社超」のブローカー対応が紹介されていますが、最新のレビューや公式サイトを見ると、Incogniのカバレッジはさらに広がっています。
主なアップデート(2026年時点)
- Deloitteによる独立評価でIncogniのデータ削除実践が検証され、420社超のブローカーへの削除と2億4500万件超の削除リクエスト処理が確認されています
- 2026年3月時点でカスタム削除データベースは3,000以上のユニークドメインに拡張されています
- データが時間経過で再掲載されるため、公開ブローカーは60日、プライベートブローカーは90日ごとに再請求する循環方式を採用しています
- 対応地域は欧州全域に加え、英国・北アイルランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、マン島、リヒテンシュタインまで拡大しています
ユーザー評価面でも、PCMagからは個人データ削除サービス部門のEditors' Choiceを受賞しており、Trustpilotでの平均評価は4.4/5と高水準を維持しています。元記事の「250社超」という数字は控えめな表現で、実際の対応規模はさらに大きいと言えます。
米カリフォルニア「Delete Act」始動——データブローカー規制の制度的進展
Incogniのような削除サービスを後押しする形で、2026年は米国のデータブローカー規制が大きく前進した年となっています。
The Delete Act creates a centralized deletion system for data brokers beginning August 1, 2026.
具体的には、2026年1月にカリフォルニアDelete Actの削除請求・オプトアウトプラットフォームが稼働し、年次登録義務に加えて新たな罰則が課されるようになりました。2026年8月1日以降、データブローカーはDROPシステムに少なくとも45日ごとにアクセスし、消費者の削除リストをダウンロードして処理することが義務付けられています。違反時の制裁も強化されており、削除請求未処理には1請求あたり1日200ドルの罰金が課され、2026年1月には未登録の2社に対しそれぞれ4万2000ドルと3万4400ドルの罰金が科されました。さらにSB 361により、ブローカーは収集データに加え、外国の関係者・連邦/州政府・生成AI開発企業への販売有無まで開示する義務を負います。登録義務を課す州は現時点でカリフォルニア・バーモント・テキサス・オレゴンの4州にとどまりますが、規制圧力は確実に強まっています。
Q&A
Q. Incogniは具体的に何をしてくれるのですか? 250社を超えるデータブローカーに対して、ユーザーの個人情報の削除を求める請求を自動で送信します。GDPR(欧州)やCCPA(米カリフォルニア州)などのプライバシー法を根拠に交渉し、進捗状況はダッシュボードでリアルタイムに確認できます。
Q. Appleのプライバシー機能だけでは不十分なのですか? Appleの機能は今後の追跡を抑える役割を果たしますが、過去に収集されて既に数百のブローカー間で拡散した情報までは取り消せないと9to5Macは説明しています。既出のデータに対処したい場合は、Incogniのような削除サービスが補完的な役割を果たすという位置づけです。
Q. どのプランを選べばよいですか? 標準的なデータブローカーへの削除請求だけでよければスタンダードプラン、家族で利用するならファミリープラン(本人に加えて最大4人追加可能、本人を含めて最大5人)が選べます。SNS・公的記録・フォーラム以外のサイトにもカスタム請求を行いたい場合はUnlimitedプランが上位選択肢になります。