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Intel Core Ultra 9 290K Plusが中止された理由か——幻のフラッグシップ試作機ベンチで270K Plus比わずか2%

GadgetDrop 編集部9
Intel Core Ultra 9 290K Plusが中止された理由か——幻のフラッグシップ試作機ベンチで270K Plus比わずか2%

Intelが数ヶ月前のArrow Lakeリフレッシュ発表時にラインナップから外した「幻のフラッグシップ」Core Ultra 9 290K Plus。Tom's Hardwareによれば、Intelはこのチップが見送られたことを確認しており、リークが多数存在していたにもかかわらず製品化には至りませんでした。そのエンジニアリングサンプルが中国のレビュアーの手によってテストされたとTom's Hardwareが伝えています。結果は下位の270K Plus比でゲーム約2%、生産性タスク約4%という僅差にとどまり、さらに比較に用いられたAMD Ryzen 9 9950X3D2に生産性で約8.3%差をつけられる内容で、Tom's HardwareはIntelが製品化を見送った理由を裏付ける結果と報じています。Core Ultra 9相当のArrow Lakeリフレッシュを狙っていたユーザーにとっては、270K PlusまたはAMD X3Dシリーズが現実的な選択肢になりそうです。

285Kとほぼ同じ:290K Plusの正体

Core Ultra 9 290K Plusは、既存の285Kをベースにしたチップとして噂されていたモデルです。コア構成は285Kと同じ24コア(8Pコア+8Eコア)で、クロック速度をわずかに引き上げ、DDR5-7200サポートやIntelのバイナリ最適化ツールといった新機能に対応するとされていました。

このバイナリ最適化ツールは現時点でArrow Lakeリフレッシュ世代のシリコンにのみ対応しており、BIOSがCPUを正しく認識していたことから、今回手に入ったサンプルが本物の290K Plusであると裏付けられたかたちです。ただし、これはあくまでエンジニアリングサンプルであり、量産品とは挙動が異なる可能性がある点には注意が必要です。

なお、Intelはこのチップの存在を示すリークが多数出ていたにもかかわらず、最終的に製品化を見送ったことを認めているとTom's Hardwareは報じています。今回のベンチマーク結果は、その判断の妥当性を補強する内容と言えます。

合成ベンチマーク・生産性タスクでの結果

公開されたベンチマークでは、シングルコア性能の伸びはごくわずかで、マルチコアでようやく2%台の差が出る程度にとどまりました。

ベンチマークCore Ultra 9 290K PlusCore Ultra 7 270K Plus差分
CPU-Z(シングル)920905+1.65%
CPU-Z(マルチ)19,54619,007+2.84%
Cinebench R23(マルチ)44,81044,230+1.31%
Cinebench R24(シングル)146145+0.69%
Geekbench 6(マルチ)24,27323,642+2.67%

合成ベンチマーク全体の平均で見ると、290K Plusが270K Plusを上回ったのはわずか1.5%でした。最大の差はCPU-Zのマルチコアで+2.84%、Cinebench R24のシングルコアではほぼ誤差レベルの+0.69%にとどまっています。

圧縮処理・リアルタイムレンダリング・コンパイルといった重量級タスクでは、比較に用いられたAMDのRyzen 9 9950X3D2が、Core Ultra 9 290K Plusに対してAnsys Fluentを除くすべてのテストで勝利しました。Ansys Fluentでは290K PlusがAMDより9.3%、270K Plus比でも4.6%高速という結果でしたが、生産性タスク全体を平均すると、290K Plusは270K Plus比で6.3%高速である一方、9950X3D2には約8.3%差をつけられています。

ゲームベンチマーク:1080p・1440pともに僅差

ゲーム性能のテストでは、290K Plusの優位性はさらに小さくなりました。1080p解像度・6タイトル平均で270K Plus比+2%にとどまり、タイトルによっては逆転される場面も見られます。

  • Delta Force(1080p): +8.3%(最大の差)
  • Counter Strike 2: +1.10%
  • Cyberpunk 2077: +2.49%
  • Black Myth: Wukong: -1.01%(敗北)
  • Resident Evil 9: -0.72%(敗北)

1440pに解像度を上げると、ゲームがよりGPUに依存するため差はさらに縮小し、平均でわずか+1.5%。Delta Forceでは+6.86%、1% Lowで+14.10%という目立った差が出た一方、Black Myth: Wukongでは-1.15%と再び負け、Resident Evil 9では同点という結果でした。

AMD Ryzen 9 9950X3D2は、その巨大なキャッシュプールのおかげで両Intel製品を難なく上回っています。

なぜIntelは290K Plusを見送ったのか

総合すると、290K Plusは270K Plus比でゲームで約2%、生産性タスクで約4%という僅差の性能向上にとどまります。Tom's Hardwareは、この程度の差ではCore Ultra 9 SKUとして大幅に高い価格を設定する根拠を作るのが難しく、Intelが製品化を見送った理由になっている可能性が高いとの見方を示しています。

また同メディアは、実際に発売された下位モデルがコストパフォーマンスに優れた製品として評価されていることから、性能差のわりに割高なフラッグシップを投入すれば、ラインナップ全体のバランス(特に見え方の観点)を崩しかねなかったとの見方も示しています。

現時点で290K Plusの製品化が再開される兆候はなく、Core Ultra 9相当のArrow Lakeリフレッシュを狙っていたユーザーは、270K Plusを選ぶか、AMD側のX3Dシリーズを検討するのが現実的な選択肢となりそうです。

Arrow Lake Refresh実売モデルの市場評価と価格動向

幻に終わった290K Plusの代わりに市場へ投入された下位モデル群は、価格設定で高い評価を得ています。Arrow Lake Refreshの発売日は2026年3月26日に正式設定され、Core Ultra 7 270K Plusは$299、Core Ultra 5 250K Plusは$199で登場しました。Intelは性能面でも強気で、270K Plusが265K比で平均15%高速、Shadow of the Tomb Raiderでは最大39%の向上を実現すると主張しています。

ただし、市場の反応は需要過多気味です。

  • Core Ultra 7 270K Plus:MSRP $299 → 実売 約$349.99
  • Core Ultra 5 250K Plus:MSRP $199 → 実売 約$219.99
  • Core Ultra 5 250KF Plus:MSRP $185 → 実売 約$199.99

発売からわずか2日で各モデルがMSRPを上回る価格で販売されている状況で、Tom's Hardwareは250K Plusを「$200で最高のCPU」としてEditor's Choiceに選出した一方、270K PlusはX3Dチップに対しゲームでは劣ると評価しています。

次世代Nova Lakeへの過渡期——LGA 1851は「最後の世代」

290K Plus見送りの背景には、目前に迫った次世代プラットフォームの存在も影響しています。LGA 1851ソケットは行き止まりであり、Nova LakeはIntelにとって真の世代飛躍となり、長年の停滞を経てAMDを上回る可能性すらあるとされています。

「次世代のNova Lakeは2026年末に登場する。これによりクラス最高の性能とコスト最適化を両立するクライアントロードマップが揃う」(Intel CEO Lip Bu Tan氏、2025年Q3決算より)

ロードマップの要点は以下のとおりです。

項目Nova Lake
投入時期2026年Q3予定
ソケットLGA 1954(新規)
最大コア数最大52コア
キャッシュ「D」「DX」バリアントで最大288MBのbLLC(Big Last Level Cache)を搭載しAMDのX3Dに対抗

LGA 1851の終焉とNova Lakeの抜本的進化が予定されている以上、Intelが既存プラットフォーム上で僅差のフラッグシップを追加投入する戦略的価値は乏しかったと言えます。

Q&A

Q. Core Ultra 9 290K Plusはいつか発売される可能性はありますか? Tom's Hardwareによれば、Intelはこのチップをラインナップから外したことを確認していると報じられており、今後の製品化に関する公式な予定は示されていません。今回エンジニアリングサンプルが流出してベンチマークが公開されたものの、性能向上が270K Plus比で平均2〜4%程度にとどまることから、同メディアは製品化が再開される可能性は低いと示唆しています。

Q. このベンチマーク結果はどこまで信頼できますか? 中国のレビュアーが入手したエンジニアリングサンプルでのテストであり、量産品ではありません。BIOSが290K Plusとして正しく認識し、Arrow Lakeリフレッシュ専用のIntelバイナリ最適化ツールにも対応していたことから本物のサンプルと裏付けられていますが、最終仕様の製品ではないため、参考値として捉えるのが適切です。

Q. Core Ultra 9 290K PlusとAMD Ryzen 9 9950X3D2ではどちらが優れていますか? 今回のテストでは、生産性タスクの平均で9950X3D2が290K Plusを約8.3%上回り、ゲームでも巨大なキャッシュを活かして両Intel製品を上回りました。ただしAnsys Fluentのような特定の解析用途では290K PlusがAMDを9.3%上回るケースもあり、ワークロード次第で評価が変わります。

出典

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