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裁判所がMuskの請求を一部認容——Apple/OpenAI訴訟にFederighi氏を追加、Cook氏は対象外に

GadgetDrop 編集部8
裁判所がMuskの請求を一部認容——Apple/OpenAI訴訟にFederighi氏を追加、Cook氏は対象外に

Elon Musk氏のxAIによるApple/OpenAI訴訟が新たな局面を迎えました。裁判所はAppleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長Craig Federighi氏を文書保管対象者(custodian)として追加することを認めた一方、Tim Cook CEOの追加要請は却下。Siriへの「ChatGPT統合」をめぐる契約の中身、そしてAppleとGoogleの提携に潜む可能性のある排他条項にまで、ディスカバリーの矛先が及び始めています。Apple Intelligenceの中核を担うキーマンの内部文書が法廷に出てくることになれば、Siri/Apple Intelligenceの今後の提携戦略にも影響が及ぶ可能性があります。

MuskはなぜAppleを訴えたのか

この訴訟は昨年、Elon Musk氏がAppleとOpenAIが共謀して競合LLMがApp Storeで成功するのを妨げていると主張したことから始まりました。現在はSpaceX傘下となったxAIは、AppleがChatGPTをSiriに統合する契約を結んだことでApp Storeのランキングに影響が及んでいると主張しています。

Apple側はこの主張を一貫して否定しており、特にOpenAIとの契約が「排他的」だとするxAIの特徴づけに強く反論しています。Apple側はそうした排他条項は存在しないとの立場です。

xAIはここ数カ月、ハーグ条約に基づき海外企業からも文書を取得しようとディスカバリー(証拠開示)の範囲拡大を試みてきました。米国の裁判所はこうした要請を認める判断を示してきた一方、海外での進展は芳しくなく、2026年1月には韓国の裁判所が大手スーパーアプリを運営するKakaoからの文書取得要請を却下しています。

Federighi氏は認容、Cook氏は却下——裁判所の線引き

今週、裁判所はxAIの請求を一部認め、Federighi氏を文書保管対象者に指定しました。一方でCook氏については却下しています。

判決文では、xAI側はCook氏とFederighi氏の両者が「Apple-OpenAI契約に関する高レベルの戦略的決定を下した」と主張したものの、その立証はFederighi氏についてのみ十分とされました。

Federighi氏はソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長として、Appleのソフトウェア開発に関する主要な意思決定者であった可能性が高く、AppleがOpenAIをApple Intelligenceに統合したことに関して、これまで提出されていない独自の関連証拠を持っている可能性がある

一方Cook氏については、「Federighi氏を保管対象者に指定すれば得られない独自の関連証拠をCook氏が持っている可能性をxAI側が説明できていない」として却下されました。Appleは2026年6月17日までにFederighi氏が保有する開示対象文書を提出するよう命じられています。

また、iPhoneの販売情報を提供するとされた別のApple従業員(名前は伏せられています)の追加要請も却下されました。担当のHal R. Ray Jr.連邦治安判事は「スマートフォン業界全体の競争に関する文書は、本件の請求範囲をはるかに超える」と判断しています。

Google提携・Musk氏のメール——双方に出た部分的勝利

裁判所はxAIによる、AppleとGoogleとの提携に関する文書要求も一部認めました。ただし当初の要求範囲は広すぎるとして縮小し、「AppleのAI提供者に関する排他条項の可能性に言及した文書」に限定する形で、これも2026年6月17日までに提出するよう命じられています。

一方、OpenAI側も小さな勝利を得ています。裁判所はOpenAIの申立てを認め、Musk氏に対し「TeslaとSpaceXのメール、その他のテキストおよびXChatアカウント」を2026年6月3日までに引き渡すよう命じました。

最後に、xAIが求めていた「Apple社内でのAI利用に関する情報の開示」は却下されました。裁判所は「従業員向けのAI利用に関するApple社内ポリシーが、原告の反トラスト主張とどう関連するのか不明だ」と述べています。

次に注目すべきポイント

直近のマイルストーンは2つあります。まず6月3日のMusk氏側のメール・XChat等の提出期限。AppleとOpenAIが共謀していたとするxAI自身の主張の裏付け、あるいは反証となる材料がOpenAI側に渡ることになります。次いで6月17日のFederighi氏関連文書とApple-Google提携関連文書の提出期限。前者はApple IntelligenceへのOpenAI統合がどのような戦略的判断で進められたのかを示唆する内部文書が出てくる可能性があり、後者は「Apple AI提供者の排他条項」に言及する文書に絞り込まれているため、Apple側が否定してきた排他性の有無が直接的な争点として浮上する見込みです。

OpenAI側もApple提訴を検討——緊張する「ChatGPT統合」の現在地

訴訟の周辺ではもう一つの緊張が走っています。報道によれば、OpenAIはChatGPT統合が期待した成果をもたらさなかったことにAppleへの不満を強め、現在は法的措置を積極的に検討しているとされています。OpenAIは外部法律事務所を起用し、Appleへの契約解除通知を含む選択肢を評価中ですが、いかなる法的措置もMusk氏との進行中の裁判終結後まで持ち越される見込みとされています。

OpenAI側の主な不満

  • Siri内のChatGPT配置や統合の宣伝不足に対する不満
  • 収益が当初の見込みを大きく下回っている点
  • 6月8日発表予定のiOS 27でGoogle GeminiやAnthropic Claudeなど競合チャットボットが新たに統合される見込みで、状況がさらに複雑化する可能性

xAIの反トラスト訴訟が「排他性」を争点にしている一方で、当のOpenAI自身がAppleとの関係悪化を訴えている構図は、本件のディスカバリーの解釈にも影響を与え得る材料です。Musk氏側の主張する「排他的提携」というナラティブと、パートナー当事者が抱える不満との温度差が、今後の審理でどのように整理されていくかが注目されます。

Apple-Google Gemini契約という「排他条項」論争の前提

ディスカバリーで開示対象となったApple-Google提携文書の背景には、すでに公表されている大型契約があります。AppleとGoogleは多年契約を発表し、次世代のApple Foundation ModelsはGoogleのGeminiモデルをベースに構築されるとされています。

項目内容
発表日2026年1月12日
年間支払額約10億ドル
モデル規模1.2兆パラメータのカスタムGeminiモデル
排他性TechCrunchの情報源によれば非排他的

Tim Cook氏はQ1 2026の決算説明で、Apple独自の開発も並行して継続するものの、パーソナライズ版Siriを動かすのはGoogleとの「協業」だと位置づけました。xAIが主張する「排他条項」の可能性は、こうした大型契約が並走する現実の中で精査されることになります。非排他的とされる本契約の実態がディスカバリーでどこまで明らかになるかが、訴訟の帰趨を左右する論点の一つとなりそうです。

Q&A

Q. この訴訟はSiriのChatGPT統合機能に影響しますか? 今回の決定はディスカバリー段階の判断であり、現時点でSiriの機能や提供状況に直接の影響はありません。ただし、Apple-Google提携に関する文書のうち「AI提供者の排他条項の可能性」に言及したものが開示対象となったことで、AppleがSiri/Apple Intelligenceで採用するAIパートナーをどう選定しているかという根幹部分が今後争点化する可能性があります。

Q. Musk氏のメールがOpenAIに開示されると何が起きますか? Musk氏自身のTesla・SpaceXのメールや他のテキスト、XChatアカウントが2026年6月3日までにOpenAI側へ渡ります。OpenAIはこれらをxAIの主張の信ぴょう性を検証する材料として利用できる立場になります。具体的に何が出てくるかは現時点では明らかにされていませんが、訴訟戦略の力関係に影響しうる材料です。

Q. AppleとOpenAIの契約は本当に排他的なのですか? Apple側は排他条項の存在を一貫して否定しています。ただし今回の決定で、裁判所はGoogleとの提携に関する文書のうち「排他条項の可能性に言及したもの」の提出を命じており、この点が今後の争点として浮上する可能性があります。

出典

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