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ペンシルベニア州民、AIデータセンター推進のシャピロ知事に猛反発——2時間のタウンホールで「強引に押し切られた」と告発

GadgetDrop 編集部5
ペンシルベニア州民、AIデータセンター推進のシャピロ知事に猛反発——2時間のタウンホールで「強引に押し切られた」と告発

AIブームの裏側で、米国ではデータセンターを巡る地域社会との摩擦が深刻化しています。ペンシルベニア州では、推進派のシャピロ知事に対し住民が2時間に及ぶタウンホールで不満を爆発させ、「自分たちは強引に押し切られている」と訴えました。Tom's Hardwareが伝えた現地報道の概要を整理します。

2時間のタウンホールで20人が登壇——「支持基盤を失っている」

Inside Climate Newsの報道として伝えられているところによると、ペンシルベニア州民らはおよそ2時間にわたるタウンホールで、Josh Shapiro知事のデータセンター推進姿勢を厳しく批判しました。登壇した20人の発言者が、周辺コミュニティに及ぶ影響への懸念を次々と述べたとされています。

主な論点は以下の通りです。

  • 電気料金の上昇
  • 大量の水消費
  • 騒音公害

これらはペンシルベニアに限らず、全米のデータセンター建設地で広く報告されている問題です。

フィラデルフィアから北東に約20マイル離れたEast Whiteland Townshipに住むKelly Donia氏は、登録民主党員でありながらシャピロ知事への支持を撤回したと発言しました。同氏は「彼は支持基盤を失っている」と述べ、「彼が二度とどんな公職にも選ばれないようにすることを自分の仕事にする」と強い言葉で批判したと伝えられています。

Mechanicsburg在住のJennifer Dusart氏も、住民は「強引に押し切られてきた(bulldozed over)」と語り、論点は「公的な信頼と透明性」だと指摘しました。決定が下された後にプロジェクトの存在を知るケースが多すぎる、という不満です。

知事側は「自由放任にはしていない」と反論

シャピロ知事は州内でのデータセンター開発を支持する立場ですが、企業に何でも認めているわけではない、というのが知事サイドの説明です。

報道では、スポークスパーソンのRosie Lapowsky氏が以下のような声明を出したとされています。

企業がコモンウェルス(州)の全面的支援——税控除や迅速な許認可を含む——を望むなら、透明性、環境保護、コミュニティへの影響について厳格な期待水準を満たさなければならない。これはプロジェクトのハードルを下げるのではなく、上げるためのものだ。

州の公益事業委員会(PUC)はデータセンターのような大口需要家への対応指針を公表しており、フィラデルフィア南東部などに供給する電力会社PECOは、大口顧客に高圧送電線などのアップグレード費用を全面的に負担させる契約を結んだとしています。これにより、小口需要家が電気料金値上げを通じて負担を被ることを避ける狙いです。

3年間のモラトリアム法案も浮上——2021年の税優遇が呼び水に

しかし、こうした州政府の対応は多くの住民にとって不十分と受け止められています。

州下院議員のJamie Walsh氏(共和党・Luzerne郡選出)は、データセンター投資が州に流入している理由のひとつとして、開発業者に税優遇を与えた2021年成立の法律を挙げました。

これに対し、州上院議員のKatie Muth氏(民主党・Philadelphia選出)は、州内のすべてのデータセンター事業に3年間のモラトリアム(一時停止)を課す法案を提出する意向を示したと報じられています。可決されれば、すでに一時停止措置を導入している他の小規模な自治体に、州レベルとして加わる形になります。

全米に広がるデータセンター反発——具体的な被害事例も

ペンシルベニアの状況は、全米で起きている住民の反発と地続きです。一部のAIハイパースケーラーは、サイト周辺への環境影響を限定的またはゼロにすべく取り組むと住民を安心させようとしていますが、すでに各地で具体的な被害が報じられており、「遅すぎる」との見方も広がっています。

報道で挙げられた事例には以下があります。

事例内容
ジョージア州Fayette郡あるデータセンターが15か月で2,900万ガロンの水を消費し、周辺で水圧低下が発生
騒音問題住宅や公共インフラに近接して建設されたプロジェクトで苦情が頻発
全米世論70%の米国人が自宅近隣のデータセンター建設に反対しているとの調査結果
メリーランド州州外向けAIデータセンターのため、住民が約20億ドル(約3,000億円)の送電網アップグレード費用を負担する形に

シャピロ知事は、データセンターがペンシルベニア州財政に与える恩恵を享受しつつ、住民の利益も守るというバランスを取ろうとしていますが、住民がリスクを認識するにつれ、「対応が十分ではない」との批判が強まっている構図です。

日本でも生成AI需要を背景にデータセンター建設が各地で進みつつあります。米国で先行して表面化している電力・水資源・騒音の問題は、今後の国内議論を読むうえでも参考になる事例と言えそうです。続報を注視するのが妥当でしょう。

Q&A

Q. シャピロ知事はデータセンター建設を止めるつもりはないのですか? 止める方針は示していません。州への経済効果を重視し推進する立場ですが、税控除や迅速な許認可を受けたい企業には透明性・環境保護・地域影響に関する厳格な基準を満たすよう求めると説明しています。

Q. ペンシルベニア州で建設を一時停止する法律はできるのですか? 州上院議員のKatie Muth氏が、州内のデータセンター事業に3年間のモラトリアムを課す法案を提出する意向を示していると報じられていますが、可決されるかは現時点で確定していません。

Q. なぜペンシルベニアにデータセンター投資が集中しているのですか? 州下院議員のJamie Walsh氏は、2021年に成立した開発業者への税優遇を与える法律が要因のひとつだと指摘しています。

出典

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GadgetDrop 編集部

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