スポンジ・ボブのゲームを最速でクリアするには、ディスクを"汚す"必要があった——Tom's Hardwareが報じたこの奇妙な発見は、スピードランコミュニティが積み重ねた地道な実験の結晶です。油脂と汗を中心から8本、花びら状に塗ったXboxディスクが、タイムセーブの鍵となる「ラグクリップ」を安定発動させることが確認されました。
「ラグクリップ」とは何か——一時停止連打がレベルスキップを生む
問題の技術は「ラグクリップ」と呼ばれる。スポンジ・ボブ スクエアパンツ: バトル・フォー・ビキニ・ボトムのオリジナルXbox版においてのみ、ゲームをすばやく一時停止・解除を繰り返すと、光学ドライブのレーザーがメニューBGMを読み込もうとする際に処理がスキップされる。これがグリッチを引き起こし、本来はクリアしなければならないレベルをスキップできるようになる。
スピードランコミュニティの目標は40分切りのクリアだ。現在のリーダーボード1位はSHiFTで、記録は40分27秒。2位以下との差は90秒以上あるが、聖杯とされる40分の壁にはまだ届いていない。
オリジナルXbox版がPS2版・GameCube版よりもロード時間が短く、スピードランのデファクトスタンダードとなっている。ただしXbox自体にも微妙な差異があり、光学ドライブのメーカーだけで4種類ある。どの個体・ドライブ・ケーブルの組み合わせが最速かを求めて、SHiFTとZimら複数のスピードランナーが長時間にわたって検証を重ねた。
汗と油脂を「花びら状に8本」——偶然の発見が必勝パターンに
膨大な検証の末、着目点はハードウェアからディスクの状態へと移った。長時間の配信セッションで疲弊していたSHiFTらは、手持ちのディスクが汚れていることに気づき、試しにさらに汚してみることにしたという。
単に汚すだけでは不十分だった。最終的に「中心から花びらのように8本のスジを放射状に引く」という特定パターンが最も効果的であることが判明した。このグリス配置であれば、ディスクを読み取り不能にすることなく、ラグクリップを安定して発動できる。ハードウェアの改造は一切不要だ。Tom's Hardwareはこれを「SpongeBobラグクリップスピードランの聖杯を発見した」と表現している。
前チャンプの告白——「ディスクはペロッとなめてから枕カバーで拭く」
SHiFTが花びらグリス戦術を確認する過程で、当時の前チャンピオン・swagmasterdoритosに連絡を取ったところ、意外な告白が返ってきた。「私はディスクをなめてから枕カバーで拭いて掃除している」というものだ。
swagmasterdoритosが共有したディスクの画像を見ると、まさに花びら状のスジが確認できた。特別な機材も改造もなく、唾液と枕カバーという原始的な手段で、同じ効果を偶然に生み出していたのだ。
コミュニティはHDDへ移行、40分切りの夢は続く
こうした経緯を経て、現在のトップ層スピードランナーたちは光学ディスクを使わなくなっている。リーダーボード上位のプレイヤーは全員、XboxのHDDからゲームを起動しているとTom's Hardwareは伝えている。
移行の背景には、ラグクリップの発動が不安定すぎるという意見と、ディスクを汚したり傷つけたりすることをコミュニティ的に問題視する声があった。過去5日間でリーダーボードのトップ5に新たに2名が入ったが、SHiFTの40分27秒という記録はいまだ2位以下に90秒以上の差をつけている。聖杯の40分切りへの挑戦は、HDD時代に移った現在も続いている。
Q&A
Q. ラグクリップはXboxの全バージョンで使えるのか? ソース記事によると、光学ドライブのメーカーや基板のビデオチップなど個体差があり、どの組み合わせが最適かはスピードランナーたちが長時間かけて検証した結果として判明したものだ。現在は光学ドライブを使わずXbox HDDからの起動が主流になっているため、特定ハードウェアへの依存は薄れている。
Q. グリス塗布戦術はコミュニティのルール違反にはならないのか? SHiFTはコミュニティガイドラインに違反しないことを確認したうえで戦術を採用したとTom's Hardwareは伝えている。ただし、ディスクを傷つける可能性に対して倫理的な懸念を示すメンバーもおり、コミュニティ内で議論があったことも記事は伝えている。