速いが、危ない——Urban VPNが、WireGuardをベースにした自社開発の新プロトコル「Urban LinkX」を発表しました。通常のVPN速度と比べ最大4倍の高速化を謳う一方で、Tom's Guideは同社のプライバシー方針に深刻な懸念があるとして、利用を避けるよう強く推奨していると報じています。
Urban LinkXとは——WireGuardベースで最大4倍高速、ただし対応は限定的
Urban LinkXはUrban VPNが自社で開発した「WireGuardベース」のプロトコルで、同社は通常のVPN速度と比較して最大4倍高速になる可能性があるとしています。
現在はUrban VPNのグローバルサーバーの半数超で稼働しており、利用できるOSは現時点でAndroidとiOSです。WindowsとMac向けのサポートは5月末までに提供予定とされています。
ノーログポリシーの不在とブラウジングデータの収集
Tom's Guideは、Urban VPNのプライバシー周りに複数の問題があると指摘しています。
ノーログポリシーへの明示的言及がない
プライバシーポリシーの冒頭では「私たちはあなたの身元を知りたくなく、あなたが誰であるかを特定するためのデータを収集することはありません」と記されており、出だしは悪くないとされています。ただし、プライバシーポリシーにも公式サイトにも「ノーログポリシー」への明示的な言及がない点が大きな問題だとTom's Guideは報じています。プライバシー重視のVPNの条件として、ノーログポリシーの明文化と、独立した第三者監査が広く求められているためです。
収集対象とされるデータ
さらに踏み込んだ問題として、無料版のAndroidアプリおよびブラウザ拡張機能のプライバシーポリシーには、以下のようなデータを収集する可能性があると明記されています。
- 検索エンジンの結果ページ
- 訪問したウェブページ
- クリックストリームデータ
- 閲覧したコンテンツ(広告キャンペーン)の情報
- コンテンツを閲覧した場所(ウェブサイト・アプリ・拡張機能)
- 閲覧・検索・カート追加・購入した商品の情報
ユーザーの同意を前提に収集し、同意は撤回可能としていますが、そもそもVPNがこの種のブラウジングデータを収集すること自体が大きな赤信号だとTom's Guideは指摘しています。
AIプロンプトと出力も対象
加えて、収集対象にはAIへのプロンプトと出力も含まれており、Urban VPN自身も「一部の機微な個人情報が処理される可能性がある」と認めています。同社はそうした情報を完全に除去することは保証できないとしています。
関連会社への共有と「Do not sell」ページ
収集されたデータは、ユーザーの同意を前提にUrban VPNの関連会社であるB.I Science (2009) Ltd.と共有され、同社は「マーケティングリサーチおよび商用利用」のためにこのデータを使用すると、プライバシーポリシーに記載されています。B.I Science (2009) Ltd.はそこから商用の「インサイト」を作成し、「ビジネスパートナー」に共有するとされています。
同社のウェブサイトには「Do not sell(販売しないでください)」という専用ページが用意されており、「Urban VPNが第三者にあなたのデータを匿名で販売することを停止してほしい場合、以下の手順に従ってください」と案内されています。データ収集・販売の事実を隠していない点はわずかな救いだとしつつも、これらの兆候は安全なVPNを示すものではないとTom's Guideは評価しています。
Tom's GuideはUrban VPNに対し、ノーログポリシーを公約しない理由、ユーザーデータを収集して第三者に販売する理由について問い合わせましたが、記事公開時点で回答は得られていないとされています。
「100%無料・100%高速・100%匿名」の謳い文句に注意
Urban VPNは自社サイトで「世界で唯一の100%無料・100%高速・100%匿名のVPN」を掲げ、1億人超のユーザーに信頼されているとアピールしています。「無制限の帯域幅」と82のサーバーロケーションも訴求点で、これは無料VPNとしてはかなり多い水準だとされています。
一方で、こうした「うますぎる話」は、結局ユーザーのデータで支払うことになる可能性が高いと指摘されています。安全な無料VPNの選択肢として、PrivadoVPN Free、Windscribe Free、Proton VPN Freeの名前が挙げられています。
プライバシーポリシーに記された自社申告に基づく評価である点が重要です。新プロトコルUrban LinkXの登場は技術的には注目に値しますが、データの取り扱いを重視するなら、Urban VPNの利用は見送り、ノーログポリシーを明文化し独立監査を受けている他の選択肢を検討するのが妥当だとTom's Guideは結論づけています。
同時発表の「Protocol Control」と展開スケジュールの詳細
Urban LinkXの発表と同時に、Urban VPNはアプリ内プロトコル切替機能「Protocol Control」も公開しています。この機能はVPN接続に使うプロトコルを直接選べるもので、必要に応じて従来のプロトコルスタックにアプリのインターフェースから切り替えられ、手動の再設定は不要です。
具体的な展開状況と数値は以下の通りです。
| 項目 | 数値・状況 |
|---|---|
| 稼働サーバー | 692台中394台 |
| 展開国数 | 88カ国 |
| Androidプレミアム | 100%(デフォルト有効) |
| iOSプレミアム | 33%→5月7日に100%へ |
| macOS | 5月中旬予定 |
| Windows | 5月下旬予定 |
速度面ではラボテストで約5倍、Android米国サーバーでの実環境テストではダウンロード平均2倍・アップロード平均4倍という結果が示されています。またWindowsへの展開後、無料ユーザーにもUrban LinkXへのアクセスが拡張される予定とされています。
業界全体のWireGuard派生プロトコル競争のなかでの位置づけ
Urban LinkXの登場により、Urban VPNはNordVPNのNordLynx、ExpressVPNのLightwayといった独自WireGuard派生プロトコルを運用するコンシューマー向けVPNプロバイダーのグループに加わりました。
技術的透明性における課題
WireGuardには静的IPテーブルというプライバシー上の制約があり、NordVPNはダブルNATで対応していますが、Urban VPNは同種の対策を講じているかを開示していません。プレスリリースは速度・安定性・展開の容易さに焦点を当て、プライバシーアーキテクチャの詳細には踏み込んでいない状況です。
業界全体でもWireGuardへの移行が加速しています。2026年1月には、Mullvad VPNがWireGuardを理由に全プラットフォームでOpenVPNサポートを正式に廃止しました。速度面でもWireGuardベースのプロトコルはOpenVPN比で3〜5倍高速で、速度ロスは1〜3%程度とされており、これがVPN速度差の最大の技術的要因となっています。Urban LinkXもこの大きな流れのなかで、各社が独自最適化で差別化を競う構図の一角を占めています。
Q&A
Q. Urban LinkXは無料ユーザーも使えますか? 現時点で利用できるOSはAndroidとiOSで、Urban VPNのグローバルサーバーの半数超で稼働しています。WindowsとMacへの対応は5月末までに予定されています。
Q. Urban VPNはどのようなデータを収集していますか? プライバシーポリシーによれば、無料のAndroidアプリやブラウザ拡張機能では、訪問したウェブページ、検索結果、クリックストリーム、閲覧・購入した商品情報などを収集する可能性があるとされています。さらにAIへのプロンプトと出力も対象に含まれ、機微な個人情報が処理される可能性があると同社自身が認めています。これらのデータは同意を前提に関連会社B.I Science (2009) Ltd.と共有されます。
Q. ノーログポリシーはありますか? プライバシーポリシーおよび公式サイトのいずれにも、ノーログポリシーへの明示的な言及はないとTom's Guideは報じています。