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YouTubeが「顔のディープフェイク」検出機能を18歳以上の対象ユーザーへ段階開放——数週間かけて順次展開

GadgetDrop 編集部7
YouTubeが「顔のディープフェイク」検出機能を18歳以上の対象ユーザーへ段階開放——数週間かけて順次展開

あなたの顔が、知らないうちにAI生成動画の中で他人のセリフを話しているかもしれません。YouTubeは、そうした「顔のディープフェイク」を自分自身で発見し、削除申請できる「likeness detection(類似性検出)」機能を、18歳以上の対象ユーザーへ広く開放すると発表しました。これまでジャーナリストや著名人など一部に限定されていたツールが、今後数週間かけて段階的に拡大される見通しです。

ディープフェイク検出が18歳以上の対象ユーザーへ拡大

YouTubeは、AIによる顔のディープフェイクを検出するツールを、これまでのジャーナリスト・政治家・政府関係者・エンターテイメント業界の人物といった限定対象から、18歳以上の対象ユーザーへ拡大すると発表しました。Android Authorityによれば、展開は「今後数週間かけて段階的に(gradually over the next few weeks)」進められる見通しで、即日全員が使えるわけではない点に注意が必要です。

公式クリエイターフォーラムでの発表では、本機能は「自分の顔が無断で使われたAI生成動画を発見・管理するため」のものと位置づけられています。対象となるのは、本人の顔が改変または合成されて使われた「altered or synthetic」な動画です。要するに、自分の顔が知らないAI動画に登場していないかをYouTube側のスキャンで確認でき、見つかれば削除を申請できる仕組みが、ようやく一般利用者にも届くということです。

利用には政府発行IDと自撮り動画による本人確認が必要

機能はYouTube Studio上で提供され、利用開始時には一度きりの本人確認プロセスを通過する必要があります。具体的には次の2点の提出が求められます。

  • 政府発行の身分証明書(government ID)のアップロード
  • 短い自撮り動画(brief selfie video)の録画

確認が完了すると、ユーザーは自分の顔がAI生成動画のどこに登場している可能性があるかを把握でき、YouTubeのプライバシーガイドラインに違反すると判断した動画について削除申請を行えます。

途中で機能の利用をやめたい場合は、プログラムから離脱して、登録した顔データの削除を申請することもできます。

投稿歴ゼロでも保護対象——「クリエイター要件」は実質撤廃

今回の拡大では、誰が「クリエイター」として利用できるかについて、実質的に厳しい要件は設けられていないと報じられています。YouTube広報のJack Malon氏はThe Vergeに対し、次のようにコメントしています。

「今回の拡大によって、YouTubeに10年間アップロードを続けてきたクリエイターも、これから始めたばかりのクリエイターも、同じレベルの保護を受けられることを明確にしている」

つまり、投稿実績の長短にかかわらず、対象範囲のユーザーであれば同じ機能を利用できるという位置づけです。

現時点では「顔」のみ対応——声のクローンはどうなる?

注意点として、現時点で検出対象となるのは顔のlikeness(類似性)に限られ、AIで生成された音声クローン(voice clone)は対象に含まれていません。ディープフェイクは映像と音声の両方で問題化していますが、今回の機能はあくまで「顔の無断利用」を捕捉するためのものです。

利用手順は次のように案内されています(パソコンのYouTube Studioから操作)。

  1. 左メニューから「Content detection(コンテンツ検出)」→「Likeness(類似性)」→「Start now(今すぐ開始)」を選択
  2. likeness検出技術の利用許可をYouTubeに付与
  3. 数分かかる一度きりの本人確認プロセスを完了

自身の顔がYouTube上のAI生成動画に使われている可能性を懸念している人にとって、今回のアップデートは「政府発行IDと顔の自撮り動画をYouTubeに預けるコスト」と「無断利用動画を自ら発見・削除申請できる便益」を天秤にかけて判断するアップデートと言えます。プライバシー上の機微情報をプラットフォームに渡す重さを許容できるかが、登録の判断軸になります。

段階的に広がってきたlikeness検出——ロードマップで読む今回の位置づけ

今回の18歳以上への開放は突発的な決定ではなく、約1年半かけて積み上げられてきた拡大計画の延長線上にあります。時系列で整理すると次のとおりです。

これまでの展開タイムライン

時期対象
2024年ツールを最初に予告
2025年10月YouTube Partner Program(YPP)クリエイターへ展開
2026年3月10日政治家・政府関係者・ジャーナリストへ拡大
2026年4月俳優・アスリート・ミュージシャン等エンタメ業界へ拡大
2026年5月18歳以上の対象ユーザーへ拡大

YouTubeは2024年に本ツールを最初に予告し、2025年10月にYPPクリエイターへ展開を開始しました。その後、2026年3月10日に政治家・政府関係者・ジャーナリストへ広げ、4月には俳優・アスリート・ミュージシャンといったエンタメ業界へと対象を拡大しています。エンタメ業界への拡大時には、CAA・UTA・WMEといった大手タレント事務所がツールへのフィードバックを提供しています。母集団としても、2026年3月時点でYPPは約400万クリエイター規模に達しており、今回の18歳以上への開放はこの積み上げの先にある一手として位置づけられます。さらにYouTubeは、将来的に検出対象を音声(声)や著名キャラクター等のIPへ広げる方針も示しています。

法整備とプライバシーのトレードオフ——「NO FAKES Act」と顔テンプレート

likeness検出は単なる機能追加ではなく、米国の立法動向や将来の運用構想とも連動しています。YouTubeは連邦法「NO FAKES Act」への支持を表明しており、個人の声や外見をAIで無断再現する行為への法的枠組みづくりを後押ししています。加えて、将来的にはContent IDと同様に違反コンテンツをアップロード前にブロックしたり、対象者がその動画を収益化できるようにする仕組みも検討されています。

一方で、運用面では次の留意点があります。

  • 検出≠自動削除: 検出されてもプライバシーガイドライン違反でなければ削除されず、パロディや風刺は引き続き保護対象として個別に評価されます。
  • 生体情報の提供コスト: 登録時に生成される「顔テンプレート」をめぐっては、生体情報の収集と同意のあり方に懸念が指摘されています。

利用者は保護を得る代わりに、自らの生体情報をプラットフォームへ預ける構造を受け入れることになります。

法整備が追いつくまでの過渡期において、この機能をどう使うかは個々のユーザーの判断に委ねられています。

Q&A

Q. 自分のアカウントではいつから使えますか? YouTubeは「今後数週間かけて段階的に(gradually over the next few weeks)」18歳以上の対象ユーザーへ展開するとしています。展開順序などの詳細は出典元を参照してください。YouTube Studioの左メニューに「Content detection」→「Likeness」の項目が現れているかを定期的に確認するのが、自分のアカウントへの到達を把握する実務的な方法になります。

Q. AIで作られた「声のクローン動画」も検出できますか? いいえ、現時点ではできません。本機能は顔のlikeness(類似性)のみを対象としており、AI生成の音声クローン(voice clone)は対象に含まれていないとされています。

Q. 一度登録した顔データは後から削除できますか? できます。likeness検出プログラムから離脱し、登録した顔データの削除を申請することが可能だと案内されています。

出典

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