Cisco(シスコシステムズ)が2026会計年度第3四半期に売上158億ドル(約2兆4,000億円、前年同期比12%増)という過去最高を達成した同じ日に、最大4,000人規模のレイオフを発表したと、Ars Technicaが報じています。CFOは「コスト削減目的の再編ではない」と説明したとされていますが、過去最高益と人員削減が同時に発表される構図は、業績好調でも雇用は守られない時代を象徴する事例として注目を集めています。
なお、本記事はArs Technicaの報道に基づいています。決算電話会議の発言・関係者名等の詳細は出典元を参照してください。
過去最高売上の裏で進む人員削減
Ars Technicaによれば、Cisco CEOのChuck Robbins氏は5月13日付のブログ投稿で、2026会計年度第3四半期の売上が前年同期比12%増の158億ドル(約2兆4,000億円)に達したと報告しました。Robbins氏は従業員に対し、経営陣として「Ciscoのために皆さんが実現した成長をこれ以上ないほど誇りに思う」と述べたと伝えられています。
しかし、その誇りは成果を上げた従業員を雇用喪失から救うことにはなりませんでした。Robbins氏は同じブログで、第4四半期に全従業員ベースの5%未満にあたる4,000人未満の人員削減を行うこと、通知の大部分は5月14日から開始され、各地域の法令に従って世界的に進められることを発表したとされています。
CFO「コスト削減ではなく再配分」——AI領域への投資シフト
水曜夜の投資家向けカンファレンスコールで、CiscoのCFOはレイオフの位置付けについて、「コスト削減主導の再編ではなく、すでに強固な基盤からの再配置であり、リソースをシリコン・光学・セキュリティ・AIの周辺に再配分するものだ」と説明したと、Ars Technicaは決算電話会議のトランスクリプトを引用するかたちで報じています。
Robbins氏のブログによれば、削減で生まれた余力は「シリコン、光学、セキュリティ、そして全社的な従業員のAI活用」への投資に振り向ける方針とされています。
このレイオフに伴い、Ciscoは最大10億ドル(約1,500億円)の税引前費用を計上する見込みで、うち4億5,000万ドル(約675億円)を2026年度第4四半期に、残りを2027年度中に認識する予定だと報じられています。
AIインフラ受注が想定を大幅に上回る
レイオフが「業績不振による削減」ではないことは、AI関連の数字からも読み取れます。Ars Technicaによると、Ciscoは決算発表で、ハイパースケーラー向けのAIインフラを今会計年度これまでに53億ドル(約8,000億円)販売したと明らかにしました。
同社のAIインフラ事業に関する通期見通しは、以下のように上方修正されています。
| 項目 | 従来見通し | 修正後 |
|---|---|---|
| 受注 | 50億ドル(約7,500億円) | 90億ドル(約1兆3,500億円) |
| 売上 | 30億ドル(約4,500億円) | 40億ドル(約6,000億円) |
受注は1.8倍、売上は約1.33倍への引き上げとなり、AIインフラ需要が当初想定を大きく超えるペースで拡大している様子が読み取れます。Robbins氏はカンファレンスコールで、今回の人員削減は「強い立場からの再構築であり、成長を加速する技術にフォーカスするためのものだ」と説明したと伝えられています。
ボーナス按分+再配置プログラム75%実績——4,000人に提供される支援策
Robbins氏のブログによれば、対象となる従業員には2026会計年度ボーナスの按分支給が行われるとされています。加えて、社内外の次の機会探しを支援する以下のサービスを提供するとしています。
- Ciscoの再配置プログラムによる就職支援(参加者の75%が次の役割を見つけたとされる実績あり)
- Cisco Uの全コース・認定資格への1年間のアクセス(AI、セキュリティ、ネットワーキングなどをカバー)
過去最高売上を記録した直後に最大4,000人を削減するという構図は、業績好調でも雇用が守られるとは限らない現実を示す事例として注目されます。詳細は出典元を参照してください。
ネットワーキング25%増・Acacia光学10億ドル——AIインフラを支える具体ライン
今回の決算では、AIインフラの周辺事業の好調ぶりも具体的な数字として明らかになっています。Ciscoのネットワーキング売上は前年比25%増の88.2億ドルに達し、データセンタースイッチング受注は前年同期比40%以上の伸びを記録しています。光学分野でも、Acacia光学事業は当四半期に10億ドルを超える受注を獲得したと開示されています。
2027年度のさらなる成長見通し
CFOのマーク・パターソン氏はアーニングスコールで、2027年度のAIハイパースケール側の売上が少なくとも60億ドルに達すると見るのは合理的だと示唆しています。通期見通しも引き上げられており、2026年度通期売上は従来の612億〜617億ドルから628億〜630億ドルへ上方修正されました。CEOのChuck Robbins氏は、独自シリコンを持たないAIインフラ企業はハイパースケーラーとの関係において「関連性を保つのに苦しむ」と踏み込んだ発言をしています。今回の再配置が、シリコン主導の競争に賭ける戦略と一体であることが読み取れます。
「過去最高益+大量レイオフ」はCiscoだけではない——2026年テック業界の構造
Ciscoの構図は、2026年のテック業界全体に広がるパターンの一部です。
- 2026年初頭5か月で世界のテックレイオフは9.2万人を超えています
- 主要企業ではMeta約8,000人、Oracle最大3万人、Block約4,000人といった削減が報じられています
- Nikkei Asiaの集計では、2026年第1四半期のテックレイオフのうち47.9%がAI・自動化に起因するとされています
背景には巨額のAI設備投資があります。Microsoft・Amazon・Meta・Googleの2026年AI関連設備投資の合計は7,250億ドルに達し、前年比77%増という規模に膨らんでいます。一方で人材ミスマッチも深刻で、米国では27.5万件のAI関連求人が空いている一方、解雇された人材とのスキルギャップが課題として指摘されています。
AIが財務上のスケープゴートとして使われるケースもある——「AI-washing」への批判も上がっています。
過去最高益と大量レイオフが同時に進む構図は、Cisco一社にとどまらない業界全体の潮流として浮かび上がっています。
Q&A
Q. 今回のレイオフは業績悪化が原因ですか? Ars Technicaの報道によれば、いいえ。Ciscoは同日に2026会計年度第3四半期の売上158億ドル(前年同期比12%増)という過去最高を発表しています。CiscoのCFOは「コスト削減主導の再編ではない」と説明し、シリコン・光学・セキュリティ・AI領域へのリソース再配分が目的だとされています。
Q. 削減規模はどれくらいですか? 全従業員の5%未満にあたる4,000人未満とされています。通知は2026年5月14日から開始され、各地域の法令に従って世界的に進められると報じられています。Ciscoはこれに伴い最大10億ドル(約1,500億円)の税引前費用を計上する見込みです。
Q. AIインフラ事業は好調なのですか? はい。今会計年度これまでにハイパースケーラー向けで53億ドル(約8,000億円)を販売し、通期受注見通しを50億ドルから90億ドルへ(1.8倍)、売上見通しを30億ドルから40億ドルへ引き上げているとされています。