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ディズニー マジックキングダム深夜整備の舞台裏——50年超アトラクションを支える約75人の第3シフトをTechRadarが独占公開

GadgetDrop 編集部9
ディズニー マジックキングダム深夜整備の舞台裏——50年超アトラクションを支える約75人の第3シフトをTechRadarが独占公開

午後11時から午前6時——マジックキングダムが閉園してから開園までのわずか7時間に、約75人のキャストメンバーがクレーンを吊り、振動センサーを読み、ターンテーブルを丸ごと持ち上げています。54年動き続けるアトラクションの裏で何が起きているのか、TechRadarがDisneyから独占的に許可された第3シフトのバックステージツアーで明らかにしました。Mad Tea PartyからIt's a Small Worldまで、半世紀以上動き続けるアトラクションの裏側に、エンジニアリングサービス上級マネージャーのTaylor McLaughlin氏が案内しています。

午後11時から午前6時に動く「第3シフト」の全貌

McLaughlin氏は2013年にメカニカルエンジニアとしてDisneyへ入社し、Hollywood StudiosのStar Wars: Rise of the Resistance立ち上げを経て、現在はFantasylandとTomorrowland Speedwayのエンジニアリング運用を統括しています。担当チームは約75人のキャストメンバーで構成され、主に午後11時から午前6時にかけて作業しています。

取材前日のMad Tea Partyでは、屋根の小さなハッチからチェーンを通し、そのチェーンでスピンするターンテーブルの一つを床から完全に吊り上げる大規模整備が行われていました。チェーンが吊り上げ手段で、フラットベッドトラック3台分のクリビング(支保材)はターンテーブルを下から支えるために使われ、ドライブ部品とベアリングへ安全にアクセスできる状態を作っていました。午前6時にはクレーンもトラックも撤収済みで、開園準備が整っていたといいます。「うちのチームを誇りに思います。見ても気づきもしないはずです」とMcLaughlin氏は語りました。

「ライドモーションプロテクション」とアナログ制御の共存

Mad Tea Partyに入る整備員全員は、RMP(Ride Motion Protection)というプロトコルに従います。電源を物理的に遮断し、各自がE-stopに自分の南京錠をかけ、専用ボードに身分証を登録するまで誰も動きません。McLaughlin氏は記者にも運転免許証の提示を求め、ロックスリーブへ差し込ませました。中に人がいる限り何も動かない——その物理的な証拠を全員ぶん残してから、初めて作業が始まります。

操作コンソールには、Tron Lightcycle/Runのようなデジタル診断画面ではなく、点滅パターンの意味を記したラミネート紙が貼られています。一方で新しい技術も層状に追加されています。ベアリングとドライブ部品の傾向を時系列で追う振動センサー、初期故障の兆候を捉えるためのギアボックスオイル分析、そしてエンジニアが実際にティーカップに乗り込んで加速度計でモーションデータを記録するテストサイクルも導入されています。「振動の上昇が見えれば早い段階で変化を捉え、計画的に整備に入れます」とMcLaughlin氏は説明しています。

半分稼働でもゲストを通す——並列・冗長設計で「ゼロ稼働」を避ける

故障そのものをなくすのではなく、起きてもゲストが気づかない構造をつくることが基本姿勢だと整理されています。

アトラクション冗長設計
Space Mountain独立した2系統のトラックを並走
Dumbo(Storybook Circus)モーター・ギアボックス・整備スケジュールを別々に持つ2系統の並列運用
Soarin'(EPCOT)劇場を3つ用意し、1つをオフラインにしても運営継続

「半分のキャパシティでもゲストを通せるのは、ゼロより遥かにいい」とMcLaughlin氏は語っています。さらにオペレーター側も、異音・異臭・振動を感じたら即時停止と点検を行うルールで、最近もSeven Dwarfs Mine Trainで報告された機械的な異常の疑いを調べたところ、最終的に意図された音響演出だったケースもあったといいます。

Tomorrowland Speedwayの「機械式」と1971年建造の裏建物

Tomorrowland Speedwayは技術スペクトラムの反対側に位置するアトラクションです。車載コンピューターもソフトウェアアップデートもなく、ガソリンエンジンと機械系のみで構成され、地下に埋設されたタンクへ燃料が運び込まれます。現行車両の一部はTokyo Disneylandが同種のアトラクションを終了した際に移送され、現地で既存システムへ合わせて改修されました。フードリンク機構の不具合で点検中にフードが落ちる事象が時折発生したため、フリート全体に空圧式フードサポートを後付けし、危険要因を取り除いたとのことです。

It's a Small Worldの裏には、1971年建造のオリジナル建物が今も毎日稼働しています。ボートが整列し、上部には吊り上げ・移動用インフラが並び、その中で3人のエンジニアが54年経つアトラクションの350体超のアニマトロニクスを夜通し整備しています。ショーテクニシャンのJoe Ignell氏もその一人で、チームは今もオリジナルのマニュアルを参照しながら作業を進めています。当夜は1体の腕を取り外し、溶接へ送り、戻して再取り付けるまでを同じシフト内で終えました。動作リファレンスがマニュアルに残っていない場合は、ネットに残る数十年前のパーク映像を探して当時の動きを確認することもあるそうです。1970年代初頭の油圧アニマトロニクス技術が、今もここで動き続けています。

2時間停止=数千人に波及——Mine Trainで進む予測保全

Seven Dwarfs Mine Trainは、現代的な保全思想が最も色濃く出るアトラクションです。開業当初は多くのソフトウェアフォルトが「停止して退避」を初期動作にしていましたが、McLaughlin氏のチームはサステインエンジニアと協業してロジックを書き換え、軽微な事象であれば長時間ダウンタイムなしに復帰できるようにしました。現在は性能データに基づく予測アラートを出し、フォルト発生時はエンジニアがリモートで状況を確認して復旧を早めるケースもあります。

取材時点ではマルチナイトのテストが進行中で、夜間にPLCロジックを更新し、列車を走らせ、通常の夜間整備までを同じ枠内に収めていました。Mine Trainの2時間停止は数千人のゲストに波及するため、停止頻度と時間を縮めること自体が実質的な処理能力向上になるという見方が示されています。

読者への示唆

この独占取材が示しているのは、Disneyの保守戦略が「あらゆる箇所に最新技術を入れる」発想ではなく、信頼性・安全性・復旧性が実際に上がる場所に絞って手を入れる方針だという点です。Mad Tea Partyは振動センサーとオイル分析で延命し、Tomorrowland Speedwayは空圧フードサポートという小さな改修で安全を底上げし、Mine Trainはソフトウェア側でダウンタイムを削っています。次に開園直後のアトラクションへ乗ったとき、ターンテーブルがなめらかに回るのは、その数時間前にチェーンで丸ごと吊り上げられていたからかもしれない——そう想像してみると、毎朝の「何事もなかったかのような開園」は、まったく違う風景に見えてきます。

Tomorrowland全体で進む2026年の段階的リフレッシュ

夜間整備の延長線上で、Tomorrowlandは2026年に入って表側のリニューアルも加速しています。Tomorrowland Speedwayでは入口付近に新しいムラルが登場し、青・赤・オレンジの鮮やかな色彩で、Space Mountainを背景にスタイライズされたレースカーが走り、「Start your engines!」の文字が描かれています。

  • Buzz Lightyear's Space Ranger Spinは2025年8月4日に休止し、新車両・ブラスター・ターゲット・アニマトロニクス・シーンを刷新して2026年に再開予定です
  • Carousel of Progressには、ディズニーランドで近年デビューしたものと同様のウォルト・ディズニーのオーディオアニマトロニクス・フィギュアが追加されます
  • Space Mountainは15年以上を経て再トラッキングの必要性が指摘されており、Tomorrowland全体の改修と連動した本格的なリイマジニングとして、2026年8月頃の着手が議論されています

機械的整備と並行して、来園者の目に見える領域でも世代交代が進行中です。

DisneyがAI予測保全の特許出願——夜間整備の次の一手

Mine Trainで実装が進む予測保全は、企業レベルでも次の段階に進みつつあります。2026年4月に出願された新しい特許出願で、Disneyはライドシステムの状態を判定する新たな仕組みを示しており、その内容はライド車両にセンサーを取り付け、バスバーや導電レール、その他のライドシステム部品の画像を記録する異常検知システムを含みます。

機械学習(AI)が時系列で画像を分析して異常を検出し、Disneyの整備チームがライド停止前に修理や交換を行えるよう支援します。

加えて2026年4月に出願された米国特許出願US 2026/0109316 A1では、完全な手動チェックに頼るのではなく、動画技術と予測アルゴリズムによってラップバーやハーネスが正しくロックされているかをキャストメンバーがAIで確認できる構想も示されています。こうした検査は現在も行われていますが、自動検知システムによってDisneyが達成できる頻度や範囲には及びません。夜間に積み上げてきた現場知が、AI主導の常時監視へと拡張される段階に入りつつあります。

Q&A

Q. なぜTomorrowland Speedwayだけ機械式のままなのですか? 車載コンピューターもソフトウェアアップデートも持たず、ガソリンエンジンと機械系のみで構成されているためです。代わりに整備側で、フードリンクの危険要因をフリート全体への空圧式フードサポート後付けで潰すなど、機構そのものへの改修で安全性を底上げしています。

Q. RMP(Ride Motion Protection)はなぜ必要なのですか? Mad Tea Partyのようなレガシーアトラクションは整備動線がゲスト空間と重なっており、誰かが内部にいる間に動力が誤って入ると重大事故につながります。電源遮断・各自の南京錠・身分証登録というアナログな多重防護で、「中の人が全員出るまで一切動かない」状態を物理的に保証することが目的です。

Q. It's a Small Worldの裏側はどのような状態ですか? 裏の建物は1971年建造で、アトラクション自体は54年稼働し、350体超の油圧アニマトロニクスを今もオリジナルマニュアルや過去のパーク映像を参照しながら整備しています。

出典

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