Googleのソフトウェアエンジニアが、社内の非公開データを悪用して予測市場Polymarketで約120万ドル(約1億9千万円)の利益を得た疑いで起訴されたと、Android Authorityが報じています。「AlphaRaccoon」を名乗っていたとされる人物が、未公開の「Year in Search」データに基づいて高い的中率の賭けを繰り返していたという内容です。
Google社員が120万ドル獲得の疑いで連邦起訴
ニューヨークで公開された刑事告訴状によると、米連邦検察は36歳のGoogleエンジニア、Michele Spagnuolo氏をインサイダー取引の疑いで起訴しました。Spagnuolo氏はイタリア国籍でスイスに居住しているとされ、ABC Newsの報道として伝えられています。
検察によれば、同氏はGoogle社内の非公開情報にアクセスし、それを使ってPolymarket上で極めて高い的中率の賭けを行っていたとされます。賭けの対象は、まだ一般公開されていない「Year in Search」(年間検索ランキング)のトレンドや順位に関するものだったと報じられています。
罪状は以下の3つです。
- 商品取引詐欺(commodities fraud)
- 電信詐欺(wire fraud)
- マネーロンダリング(money laundering)
米司法省(DOJ)が起訴に踏み切っており、全件で有罪となった場合は数十年の懲役刑に直面する可能性があるとされています。ニューヨークで逮捕された後、225万ドル(約3億5千万円)の保釈金で釈放されたと報じられています。
「AlphaRaccoon」名義で約275万ドルを賭け
告訴状によると、Spagnuolo氏は「AlphaRaccoon」というエイリアスでPolymarketに参加していました。総額で約275万ドル(約4億3千万円)を賭け、それを約120万ドル(約1億9千万円)の利益へ転換したとされています。
検察は、有名人や著名人がGoogleの年間トレンド検索ランキングに入るかどうかについても、的中率の高い賭けを繰り返していたと指摘しています。データが一般公開される前にGoogle内部システムを悪用し、不公正な優位性を得ていたというのが告訴状の主張です。
D4vd予測が決定的な手がかりに
最大の疑惑のきっかけは、インディーアーティストのD4vd氏が2025年にGoogleで最も検索された人物になる、という極めて正確な予測だったと報じられています。検察は、この結果は公開情報だけでは合理的に予測できなかったと指摘しており、これが内部情報の不正利用を示す「赤信号」になったとされています。
通常、無名アーティストを最大手の検索トレンドのトップに当てるのは難易度が高く、外部の人間が公開データだけから推定するのは難しいと一般的に考えられます。検察側はこの一点を、内部アクセスの存在を示す状況証拠として重視しているとみられます。
Polymarketと予測市場の規制をめぐる議論
Polymarketのような予測市場は、これまで法的グレーゾーンで運営されてきたと報じられています。株式の売買ではなく、政治・世界情勢・スポーツ・インターネットトレンドの結果に賭ける仕組みで、支持者は「予測ツール」として評価する一方、批判者からは「インサイダー活動への対策が弱い賭博サイト」との指摘もあるとされています。
Polymarketが疑惑の対象になるのは今回が初めてではありません。今年初めには、地政学的イベントに関連する不自然なタイミングの賭けが浮上し、議員らからより厳しい監督を求める声が上がっていたと報じられています。一部の規制当局や法学者からは、こうした契約が「内部情報を持つ者が公衆より先に静かに利益を得る新たな機会」を生んでいる、との見方も示されています。
Googleの対応と今後の見通し
Googleは、当該従業員を休職処分にしたうえで法執行機関の捜査に協力していると説明したと報じられています。捜査の進展次第では、社内データへのアクセス管理体制や、予測市場全体の規制議論にも影響を及ぼす可能性があります。
現時点では起訴段階の主張であり、Spagnuolo氏の有罪が確定したわけではありません。連邦検察の刑事告訴状の段階で語られている内容と、最終的な事実認定は異なる可能性があるため、現時点では「重大な疑惑が浮上した段階」と捉えるのが妥当です。続報を待ちましょう。
刑事と並行する民事訴訟、合計最大50年の懲役リスク
刑事告訴と同日、商品先物取引委員会(CFTC)はSpagnuolo氏に対し民事訴訟を提起し、原状回復、利益の吐き出し、取引禁止、永久差止を求めています。告訴状によれば、同氏は23以上のYear in Search関連契約でほぼ完璧な精度のYes/No取引を行っていたとされます。
罪状別の最大刑期
- 商品取引詐欺:最大10年
- 電信詐欺:最大20年
- マネーロンダリング:最大20年
合算すれば理論上最大50年の懲役に相当します。Googleは声明で、「当該従業員は全社員が利用可能なツールでマーケティング資料にアクセスしたが、機密情報を賭けに使うのは方針の重大な違反だ」と説明しています。保釈金225万ドルは現金100万ドルで担保され、うち5万ドルは初日に納付する条件が付いています。さらに2026年4月には、陸軍特殊部隊軍曹のGannon Ken Van Dyke氏がマドゥロ作戦の機密情報を用いてPolymarketで40万ドル超を獲得したとして起訴されており、予測市場のインサイダー利用が連続的に摘発されています。
Polymarketの米国本格復帰と市場整合性強化の流れ
事件は、Polymarketが米国市場へ本格復帰した直後のタイミングで表面化しています。2025年11月25日、CFTCはPolymarketに対し修正指定命令を発行し、仲介型での米国市場アクセスを実現する規制取引所としての運営が許可されました。Intercontinental Exchangeの投資を経て評価額は90億ドルに達し、2026年1月の月間取引高は120億ドルに上っています。
2026年3月23日、Polymarketは市場整合性ルールを改定し、インサイダー取引と市場操作に関する規定を強化したと発表しています。
米国版では、第三者の取引監視業者との提携、不審な取引をリアルタイムで検知する監視デスク、そして全米先物協会(NFA)との規制サービス契約による取引慣行のモニタリングという3層体制で運用されています。規制の枠組み自体も流動的で、CFTCによるKalshiやPolymarketなど予測市場の規制案がホワイトハウスで審査中であり、トランプ大統領もCFTCによる予測市場の専属管轄を支持する立場を示しています。
Q&A
Q. 何の罪で起訴されたのですか? 商品取引詐欺、電信詐欺、マネーロンダリングの3つの罪状です。全件で有罪判決を受けた場合は数十年の懲役刑に直面する可能性があるとされています。
Q. Polymarketとはどのようなサービスですか? 政治・世界情勢・スポーツ・インターネットトレンドなど、さまざまな出来事の結果に対して参加者が賭けを行う予測市場です。株式ではなく結果そのものに賭ける仕組みで、これまで法的なグレーゾーンで運営されてきたとされています。
Q. Googleの対応はどうなっていますか? 当該従業員を休職処分にしたうえで、法執行機関による捜査に協力していると説明したと報じられています。
出典
- Android Authority — A Google employee allegedly used insider info to manipulate Polymarket bets
- U.S. Department of Justice (SDNY) — Google Employee Charged With Insider Trading
- CFTC — CFTC Charges Google Employee with Insider Trading in Search Result-Related Event Contracts