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Musk氏のOpenAI提訴を陪審が2時間未満で全棄却——1.15兆ドル責務がIPO遅延要因と指摘

GadgetDrop 編集部5
Musk氏のOpenAI提訴を陪審が2時間未満で全棄却——1.15兆ドル責務がIPO遅延要因と指摘

評議時間わずか1時間53分——カリフォルニア州オークランドの連邦陪審は、Elon Musk氏がOpenAIとSam Altman氏・Greg Brockman氏、そしてMicrosoftを相手取って起こした訴訟の全請求を全会一致で棄却しました。9人の陪審員は時効を理由に提訴が遅すぎたと結論づけ、約1,300億ドル(本記事では便宜上1ドル=約155円換算、以下同じ。約20兆1,500億円)の損害賠償請求は退けられています。評価額8,520億ドル(約132兆600億円)に達したOpenAIにとって、Q4 2026に予定される新規上場(IPO)への最大級の法的リスクが取り除かれた形です。

評議2時間未満(1時間53分)で全請求を棄却

陪審は太平洋時間の午前8時30分に評議を開始し、午前10時23分には全請求を棄却する評決に達しました。所要時間は1時間53分、つまり2時間未満です。9人構成の陪審は全会一致でMusk氏の請求を退け、Yvonne Gonzalez Rogers判事はその場で評決を自身のものとして直ちに採用しています。

Musk氏が求めていた救済は次の3点でした。

  • OpenAIの非営利部門に対する約1,300億ドル(約20兆1,500億円)の損害賠償
  • Altman氏とBrockman氏の経営陣からの排除
  • OpenAIを評価額8,520億ドル(約132兆600億円)の企業へと変貌させた営利事業体の解体

しかし陪審は時効を判断の決め手とした結果、Altman氏とBrockman氏がOpenAI設立当初の非営利の使命に対する義務に違反したかという本筋の論点には踏み込みませんでした。

時効——3年と2年の壁、Musk氏はいつ「気付いた」のか

訴えの帰趨を決めたのは、Musk氏が義務違反とされる事実をいつ認識したかという一点でした。カリフォルニア州法では、慈善信託に関する請求の時効は3年、不当利得については2年と定められています。

Musk氏は法廷で、Altman氏からの度重なる説明を信じて提訴を控えてきたと証言。Microsoftが2023年にOpenAIの営利部門に対して投じた100億ドル(約1兆5,500億円)の出資こそが、慈善事業が「盗まれた(stolen)」と確信した瞬間だったと主張しました。

これに対しOpenAI側の弁護団は、Musk氏は遅くとも2017年の時点で営利化への移行を把握しており、自身のファミリーオフィスを通じて「OpenAIの営利版」として位置付ける企業を登記していたと反論しました。Gonzalez Rogers判事は評決後、「陪審の判断を支える証拠は実質的に揃っており、その場で棄却する用意があった」と述べています。

Musk氏側は控訴する権利を留保しているものの、判事は時効に関する判断が法律問題ではなく事実認定であることから、控訴は難しいだろうとの見解を示しました。

1.15兆ドル規模の長期インフラ責務とIPOスケジュール

今回の評決は、OpenAIが非営利組織から営利目的の公益法人(public benefit corporation)へと再編する作業に対する、最も目立った法的脅威を取り除く意味を持ちます。

OpenAIは3月に評価額8,520億ドルで1,220億ドル(約18兆9,100億円)の資金調達ラウンドを完了しており、その内訳はNvidiaが300億ドル(約4兆6,500億円)、Amazonが500億ドル(約7兆7,500億円)、SoftBankが300億ドル(約4兆6,500億円)となっています。3社合計で1,100億ドル規模の出資が短期間に集中して入っている計算です。

Q4 2026のIPOに向けて準備を進めているとされる一方で、PitchBookのアナリストは、コスト構造と1.15兆ドル(約178兆2,500億円)規模の長期インフラ責務を踏まえると、上場が2027年にずれ込む可能性があると最近指摘しています。

Microsoftも免責——130億ドル投資と共同被告ステータス

共同被告として名指しされていたMicrosoftも、同じく時効を理由に陪審によって責任を免れました。MicrosoftはOpenAIに対し2019年から2023年にかけて合計130億ドル(約2兆150億円)を投資しており、義務違反の幇助を疑われていました。期間中の100億ドル(2023年分)はMusk氏が訴訟提起の「決定的瞬間」と主張した出資にあたります。

裁判所の外で記者団に応じたOpenAI側弁護人のWilliam Savitt氏は、「陪審の認定は、この訴訟が競合相手の妨害を狙った偽善的な試みであったことを裏付けた」とコメントしています(CNNが伝えた発言より)。

公判3週間・証人6人——当事者の不在

今回の3週間に及ぶ公判には、OpenAI共同創業者のIlya Sutskever氏を含む6人のテック業界の億万長者が証人として出廷し、数百ページに及ぶプライベートなメール、テキストメッセージ、社内会議のメモが証拠として提出されました。

評決言い渡しの場には、Musk氏・Altman氏・Brockman氏のいずれも姿を見せていません。

Q&A

Q. Musk氏は控訴できるのですか? 法律チームは控訴する権利を留保していますが、Gonzalez Rogers判事は今回の時効判断が事実認定であり法律判断ではないため、控訴は難しいだろうとの見解を示しています。

Q. OpenAIのIPOはいつ実施される見込みですか? OpenAIはQ4 2026のIPOを目指して準備を進めているとされています。ただしPitchBookのアナリストは、コスト構造と1.15兆ドル規模の長期インフラ責務を踏まえると2027年にずれ込む可能性があると指摘しています。

Q. 1,220億ドルの調達ラウンドの出資者は誰ですか? 3月に完了したラウンドの内訳は、Nvidiaが300億ドル、Amazonが500億ドル、SoftBankが300億ドルです。評価額は8,520億ドルです。

Q. 陪審の評議時間と構成は? 9人構成の陪審が太平洋時間8時30分から10時23分まで、合計1時間53分で全会一致の評決に達しました。

出典

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