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スマートグラスの「分厚さ」を変えるか——NuCurrentがRay-Ban MetaのNFC充電プロトタイプを公開

GadgetDrop 編集部6
スマートグラスの「分厚さ」を変えるか——NuCurrentがRay-Ban MetaのNFC充電プロトタイプを公開

スマートグラスがいまだに普通のメガネより太く見えるのはなぜか——その答えのひとつが「充電端子」にあるかもしれません。ワイヤレス充電のNuCurrentがAWE(Augmented World Expo)で公開したRay-Ban MetaベースのプロトタイプはNFCでケース内充電を行う仕組みで、コイルは「10分の数ミリメートル単位」に収まり、20分で約50%まで充電できると報じられています。フレームを大幅に薄くできる可能性がEngadgetにより伝えられています。

ノーズブリッジから消える「ポゴピン」——薄型化のカギ

現行のRay-Ban Metaをはじめ、Meta製や他社のスマートグラスの多くは、ノーズブリッジ部分に埋め込まれた「ポゴピン(pogo pins)」と呼ばれる接点で充電します。ケースにフレームをしっかり押し込まないと接続が確立しないのはこのためです。NuCurrent CEOのJacob Babcock氏は、こうした構造こそがMetaの既存ラインナップが軒並み似た見た目に収まっている大きな理由だと指摘しています。

NuCurrentのプロトタイプでは、Ray-Ban Metaの「テンプル(つる)部分」に小型コイルを埋め込み、ケース側のトランスミッタとNFCで結合させて充電する方式に置き換えられています。

20分で50%——既存モデルと同等の充電速度

スペック面で注目されるのは、ワイヤレス化しても充電時間が大きく劣化していない点です。NuCurrentによれば、プロトタイプは20分で約50%まで充電でき、これはMetaの既存スマートグラスの充電時間とほぼ同等の水準だといいます。

「すべての立方ミリメートルがスマートグラス内部では非常に重要だ」とBabcock氏は語ります。ポゴピンが太いノーズパッドの主因である一方、NFC充電に必要なコイルは「10分の数ミリメートル単位(measured in tenths of millimeters)」のサイズに収まり、内部スペースを大きく解放できる可能性があります。これは、長時間着用時の鼻あたりの負担軽減や、フレームデザインの選択肢拡大に直結しうる差です。

「ウェアラブル版Qi」への布石となるか

NFCベースの充電が普及すれば、スマートフォンにおけるQiのように、スマートグラスやその他のウェアラブル向けの共通充電規格が生まれる余地もあるとBabcock氏は述べています。ただし、AI搭載ウェアラブルでそのような共通化が実現するには「まだ数年かかる可能性がある」との慎重な見方も同時に示されています。

NuCurrentはすでに、Ray-Banを手がけるEssilor Luxotticaと同社の「Nuance Audio」グラスで提携しており、他のアイウェアブランドも追随する理由があるとBabcock氏は見込んでいます。「顔に装着するテクノロジーは、前世代のパーソナルテックよりはるかにファッショナブルで、多様な選択肢を提供する必要がある。スケールさせるには、こうした技術的制約を取り除く必要がある」と同氏は語ります。

現時点ではあくまで業界向けの展示用プロトタイプであり、Meta自身が次世代モデルでNFC充電を採用するかは明らかにされていません。スマートグラスの「見た目」が普通のメガネに近づくかどうかは、こうした充電方式の置き換えが量産設計に降りてくるかにかかっています。眼鏡として自然にかけられるスマートグラスが普及する日が来るとすれば、その入口は意外にも充電端子の置き換えから開くのかもしれません。

NFC充電が国際標準へ——3W化に向けた仕様改定の動き

NFCによる給電を支えるNFC Wireless Charging(WLC)仕様は、2026年3月にNDEF仕様とともに国際電気標準会議(IEC)により国際標準として正式採択されています。スマートグラスのコイルが「10分の数ミリ単位」に収まる背景には、こうした低電力前提の標準化作業が進んでいる状況があります。

現行仕様と次期改定のポイント

  • 現行のNFC WLCは最大1W・距離2cm以内での誘導給電を規定しています
  • 対象機器としてスマートグラス、ワイヤレスイヤフォン、フィットネストラッカーなどが想定されています
  • NFC Forumは給電上限を3Wへ引き上げる仕様改定を進めており、その理事会にはNuCurrentが新たに加わっています

3W化が実現すれば、より消費電力の大きい表示付きモデルへの応用余地も広がるとみられており、ウェアラブル向け共通規格を見据えた業界横断の動きが本格化しています。プロトタイプ単体の話題にとどまらず、規格レイヤーでの整備が並行して進んでいる点が、今回のNFC充電デモが現実味を帯びる土台となっています。

スマートグラス市場の急伸が後押しする設計刷新

充電方式の刷新が注目される背景には、スマートグラス市場そのものの急成長があります。EssilorLuxotticaは2025年にMeta製AIグラスを700万本以上販売したと公表しており、これは2023年と2024年の合計約200万本から3倍以上の伸びとなります。

指標2025年2026年見通し
スマートグラス世界出荷台数960万台1,340万台(約87%増)
Ray-Ban Meta 年産能力2,000万台規模を協議中
Meta社の世界シェア(IDC)76.1%

MetaとEssilorLuxotticaは年産2,000万台への倍増を協議しており、生産体制の拡張が現実の課題として進んでいます。一方でRay-Ban Displayは米国での需要過多を受け、国際展開が延期される事態となっています。出荷規模が一気にスケールするフェーズに入ったいま、ノーズブリッジのポゴピンを置き換えるような設計余白を生む技術は、次世代機の薄型化や量産設計の自由度を押し上げる要素として位置づけられています。

Q&A

Q. このプロトタイプはいつ買えますか? NuCurrentがAWEで披露した技術デモであり、市販品ではありません。Meta製の現行Ray-Ban Metaがそのまま同方式に置き換わるという発表もありません。

Q. 現行のRay-Ban Metaユーザーへの影響はありますか? 今回のプロトタイプは改造機であり、既存ユーザーが使う現行モデルの充電方式やケース仕様が変わるわけではありません。所有中のRay-Ban Metaは引き続きポゴピン方式での充電となります。

Q. 次世代モデルでNFC充電が採用される見込みはありますか? Meta側からの公式な採用表明はなく、現時点では明らかにされていません。Babcock氏は業界全体での実現には「まだ数年かかる可能性がある」と慎重な見方を示しています。

Q. 充電速度は遅くなるのですか? プロトタイプは20分で約50%まで充電でき、現行のMetaスマートグラスの充電時間とほぼ同水準とされています。NFC化による大きな速度低下は今回のプロトタイプでは報告されていません。

Q. なぜポゴピンを置き換えるとデザインが薄くなるのですか? ポゴピン用の部品が太いノーズパッドの大きな要因となっているのに対し、NFC充電用コイルは10分の数ミリメートル単位の厚みに収まり、内部スペースに余裕が生まれる可能性があるためです。

出典

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