1ラック約14億円——投資銀行Bernsteinが、NVIDIAの次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin」のNVL72ラックは1台あたり最大910万ドル(約14億円)に達する可能性があると指摘しました。価格を押し上げる主因は次世代メモリHBM4で、2027年には1ギガバイトあたり53ドル(約8,300円、1ドル=約156円換算の概算)まで上昇すると同行は見ています。Wccftechが2026年6月8日付で報じました。AIサービスやクラウドGPUを使う側にとっても、価格上昇分が利用料に転嫁されうる構造的な値上げ圧力として無視できない数字です。
Bernsteinが示した910万ドル試算とMorgan Stanleyとの差
Bernsteinの試算は、先行してMorgan Stanleyが公表したVera Rubin NVL72の部品コスト分析を踏まえたものです。Morgan Stanleyは、1ラックあたりのコストを約780万ドル(約12億円)とし、そのうちメモリ関連が約200万ドル(約3億円)を占めると見積もっていました。これは前世代GB300との比較で、メモリコストが前年比で435%増加するという内容です。
Morgan Stanleyの『Nvidia NVL72 Bill of Materials』と題された表では、GB300からVR200にかけてメモリコストが$373,939から$2,001,600へと約435%増加し、ラック総額の差は95%に達すると示されています。
これに対しBernsteinは、Morgan Stanleyの780万ドルという数字は「古いメモリ価格(stale memory prices)」に引きずられたものであり、現実を反映していないと指摘しています。
HBM4価格は2027年に53ドル/GBへ——Morgan Stanley前提から約3倍超
Bernsteinは「HBM4を1GBあたり約16.6ドルで計算すれば、我々もMorgan Stanleyと似た数字に着地する」としつつ、この水準は現在の市場実勢から乖離しているとの見方を示しました。Morgan Stanley前提の16.6ドル/GBに対し、Bernstein予想の53ドル/GBは約3.2倍に相当し、Wccftechの見出しでも「triple(3倍)」と表現されています。
| 項目 | Morgan Stanley試算 | Bernstein試算 |
|---|---|---|
| NVL72ラック総額 | 約780万ドル(約12億円) | 最大910万ドル(約14億円) |
| HBM4単価の前提 | 約16.6ドル/GB | 53ドル/GB(2027年) |
| メモリコストの位置づけ | ラック総額の一部(約200万ドル) | 「古い価格」に基づく試算と評価 |
Bernsteinは、Vera Rubinが量産出荷に入る2027年にはHBM4価格が53ドル/GBまで上がるとし、NVIDIAはこのコスト上昇を顧客に転嫁すると予想しています。データセンター事業者やクラウドGPUの利用者にとっては、ラック調達価格の上振れがそのままAIサービスやGPUインスタンスの値上げ圧力となり得るため、エンドユーザーが触れるAI関連サービスの価格にも中期的に波及する可能性があります。
メモリが新たなボトルネックに——AI構築コスト高騰の構造
今回のレポートは、AIインフラ投資においてGPUのパッケージング技術だけでなく、HBMの供給と価格が新たな制約になりつつある現状を浮き彫りにしています。Wccftechは関連話題として、NVIDIAとSK Hynixが次世代メモリの共同開発に向けた「複数年にわたる技術提携」を結んだことにも触れており、メモリ確保が戦略上の最重要課題になっていることがうかがえます。
ただし、いずれの数字も投資銀行のアナリストによる推定であり、NVIDIAやメモリベンダーが公式に確定させた価格ではない点には注意が必要です。Bernsteinの53ドル/GB予測も「2027年の量産時点」を前提とした見通しであり、実勢価格はサプライチェーンの状況によって変動する可能性があります。
現時点ではアナリスト同士で前提価格が大きく食い違っている状況であり、Vera Rubin世代のラック価格を語る上では「どちらの数字が現実に近いか」を見極める材料がまだ揃っていません。判断軸としては、HBM4の実勢単価が2027年量産時点で16.6ドル/GBに近づくか53ドル/GBに迫るかが、Morgan StanleyとBernsteinどちらの試算を信頼すべきかを分ける最大のポイントとなります。
Vera Rubin NVL72の性能スペックと量産スケジュール
価格試算の前提となる性能面では、Rubin GPU 1基あたりHBM4を最大288GB搭載し、メモリ帯域は22TB/sに達するとされています。NVL72ラック全体ではHBM4容量20.7TB、HBM帯域1.6PB/sという構成です。演算性能はNVFP4精度を軸に大幅な引き上げが図られています。
- NVFP4推論性能: 50PFLOPs(Blackwell比5倍)
- NVFP4学習性能: 35PFLOPs(同3.5倍)
CPU側のVeraは227億トランジスタを搭載し、Armカスタム「Olympus」コアを88コア176スレッド構成で、LPDDR5xを最大1.5TBまで接続できます。スケジュール面では、NVIDIAはRubinを2026年第1四半期に量産開始し、商用提供は2026年下半期を予定しています。1ラック910万ドルという価格水準は、こうした飛躍的な性能向上と量産入りのタイミングを前提条件として位置づけられます。性能あたりコストの観点では、HBM4容量と帯域の拡張が価格上昇を正当化する材料となる一方、メモリ単価の高騰がそのまま調達コストに跳ね返る構造も同時に内包しています。
HBM4供給を巡る3社競争——SK Hynix優位とMicronの完売見通し
価格上昇の鍵を握るHBM4については、Samsung・SK Hynix・MicronがNVIDIAのサプライヤーとして認定を受けています。供給シェアにはすでに序列があり、Vera Rubin向けで以下の構図が予想されています。
| サプライヤー | Vera Rubin向けHBM4供給シェア | 技術指標 |
|---|---|---|
| SK Hynix | 60〜70% | データレート10Gbps、電力効率40%向上 |
| Samsung | 25〜30% | — |
| Micron | 残り | サンプルで最大11Gbps |
SK HynixはHBM4の開発完了を発表し、データレート10Gbpsと電力効率40%向上を主張しています。Micronはサンプル出荷で最大11Gbpsをアピールしており、2026年のHBM生産能力は完売見込みで、HBM年率換算売上を約80億ドルと予測しています。3社認定の体制が整う一方で、上位2社に供給が偏る寡占構造と、Micron分も含めた生産枠の早期完売という需給ひっ迫が、53ドル/GBという強気予測を下支えする市場背景となっています。
Q&A
Q. Vera Rubin NVL72ラックの価格はいくらになる見込みですか? Morgan Stanleyは約780万ドル(約12億円)、Bernsteinは最大910万ドル(約14億円)と試算しており、アナリストの間で見解が分かれています。いずれもNVIDIA公式の価格ではありません。
Q. なぜBernsteinはMorgan Stanleyより高い試算を出しているのですか? HBM4メモリの単価想定が異なるためです。Morgan Stanleyは約16.6ドル/GBを前提としているのに対し、Bernsteinは2027年の量産時点で53ドル/GBまで上がると予想しています。Bernsteinは前者を「古い価格に基づく」と指摘しています。
Q. メモリ価格上昇は誰が負担するのですか? Bernsteinは、NVIDIAが上昇分を顧客(データセンター事業者など)に転嫁するとの見方を示しています。最終的にはクラウドGPUやAIサービスの料金として、利用者側にも波及する可能性があります。