GadgetDrop
その他注目

Ofcomがベルファスト暴動を受けSNS各社に通告か——ヘイト投稿削除義務を再確認、Musk氏(2億4,010万フォロワー)の拡散行動も焦点に

GadgetDrop 編集部7
Ofcomがベルファスト暴動を受けSNS各社に通告か——ヘイト投稿削除義務を再確認、Musk氏(2億4,010万フォロワー)の拡散行動も焦点に

英国の通信規制当局Ofcomが2026年6月10日、SNS各社に対しOnline Safety Act 2023に基づく違法コンテンツ対応義務を改めて通告する公開書簡を発表しました。背景には、ベルファストで一晩のうちに移民が多く住む地域の複数の住宅が放火される暴動が発生したことがあります。約2億4,010万人のフォロワーを抱えるX所有者Elon Musk氏自身が、扇動的投稿の拡散に関与しているように見えると指摘されており、Xのタイムラインを通じた言説の広がりが世界的なSNS規制論議の中で改めて注目される局面です。

ベルファスト暴動——Ofcomが「違法コンテンツ評価義務」を再確認

書簡は、SNS各社にOnline Safety Act 2023の遵守を求めるものです。同法は「憎悪を煽る、または暴力を誘発する犯罪に該当するコンテンツ」を含む違法行為のリスク評価と緩和を運営事業者に義務付けており、Ofcomは「違法コンテンツの出現リスクを低減」するよう求めています。違法コンテンツの定義についても詳細なガイダンスが提示されました。

きっかけは、月曜にダブリン出身の男性が路上で刺された事件です。スーダン国籍とされる容疑者は火曜に殺人未遂で起訴されました。容疑者の人種と推定される移民ステータスが反移民の極右勢力によって政治化され、一晩のうちにベルファストでは移民が多く住む地域で複数の住宅が覆面の男たちに放火される暴動に発展したと、Washington Postを引用するかたちで伝えられています。

Musk本人が拡散——2億4,010万フォロワーへの波及

X所有者のElon Musk氏自身が、こうした投稿の拡散に関与しているように見えると報じられています。Musk氏は約2億4,010万人のフォロワーを抱えており、過去には自身の投稿のリーチを高めるためアルゴリズムを調整したと報じられたこともあります。

リポストされたとされる主な投稿は以下のとおりです。

  • Alice Smith(アカウント名) — 英国の高等裁判所判事が「White Lives Matter」のデモ参加者を木槌で襲うBanksy風グラフィティ画像
  • Tommy Robinson氏(極右活動家) — 英国の警察・司法に「二層構造」があり移民を優遇しているとする投稿
  • Rupert Lowe氏(Restore BritainのMP) — 事件のものとされる静止画に「Millions must go(数百万人を退去させるべき)」とコメント。Lowe氏が支持する大規模強制送還に言及したものとされます
  • Matt Goodwin氏(元学者・Reform UK元候補) — 「非常に意図的な大規模・無制限の移民政策と開かれた国境」が緊張の原因だとする投稿。Goodwin氏は同政策が「西側諸国を破壊する」とも述べています

なお、これらのリポストのいずれも、直接的に暴力を呼びかける表現ではないとされています。

唐突に並べられた「Henry Nowak氏逮捕画像」の文脈

Musk氏はさらに、Visegrád 24というアカウントが今回の事件の画像と、Henry Nowak氏の逮捕画像を並べた投稿もリポストしたと伝えられています。Nowak氏は12月にSikh教徒のVickrum Digwa氏に刺殺された学生ですが、その死の直前、Digwa氏の兄弟が人種攻撃だと警察に通報したことで逮捕された経緯がありました。司法の「二層構造」を訴える文脈で過去事例として持ち出された形であり、Ofcomがプラットフォームに求める「文脈を欠いた扇動的素材の拡散リスク」と直結する事例といえます。

「強い口調ではない」書簡——規制の実効性は問われ続ける

今回の書簡は、Ofcomが「危機時の違法コンテンツ急増」に対処する新たな安全対策を発表した翌日に出されたものです。現実の悲劇の直後に拡散され、さらなる暴力を煽る種の偽情報も対象に含まれます。Xは5月に英国に対し「ヘイト・テロコンテンツ」削減に取り組むと表明していましたが、今回のMusk氏の行動はその直後にあたります。

一方、Ofcomの執行能力自体が問われている状況もあります。Metaは同月、Ofcomの罰則制度が「不均衡」だとして同当局を提訴しました。今回の通告は決して強い口調の書簡ではないと評されており、SNS各社が応じるかは現時点では見通せません。

Ofcomが前日に公表した「危機対応プロトコル」の中身

書簡の前日に公表された新たな安全対策は、違法コンテンツや児童に有害なコンテンツが急増する「危機時」に、プラットフォームが取るべき具体的な手順を初めて体系化した内容となっています。

  • 危機発生時にできるだけ早く臨時の対応チーム(temporary response teams)を展開すること
  • 重要な意思決定を記録し、事後にその対応が有効だったかを検証する「危機後レビュー」を実施すること
  • 大規模プラットフォームは、法執行機関と危機関連情報を共有するための専用連絡チャネルを維持すること

策定の引き金として明示されているのが、2024年のSouthport殺人事件後に発生した暴動と、テロ攻撃のライブ配信リスクです。これらの措置は違法コンテンツ実務規範および児童保護実務規範に組み込まれる予定ですが、効力発生には議会手続きの完了が必要だとされています。ベルファスト暴動の最中に出された通告は、この新枠組みを実運用に乗せるうえでの最初の試金石となる位置づけです。

Meta対Ofcom——10月の高裁審理が罰則制度の根幹を揺るがす

Metaが起こした訴訟は、Ofcomの「不均衡」批判を制度の核心まで踏み込ませる内容となっています。争点はOnline Safety Actに基づくfeeと罰金の算定基準である「qualifying worldwide revenue(適格世界収益)」の解釈であり、Metaは議会の意図を超えて拡張的に運用されていると主張しています。

項目内容
罰金上限適格世界収益の最大10%
Metaの昨年世界収益約2,010億ドル
理論上の最大罰金約200億ドル
高等裁判所審理日10月13・14日
波及対象TikTok、X、Snap、Pinterestなど大手プラットフォーム

Metaが勝訴した場合、Ofcomは算定方式を再調整する必要があり、その影響はXを含む大手プラットフォーム全般に及ぶとされています。ベルファスト関連でXが今後何らかの執行対象となるとしても、罰金算定の前提自体が秋の判決で揺らぐ可能性があり、執行の実効性は10月以降の司法判断と密接に連動する構図です。

Q&A

Q. Online Safety Act 2023はどのようなコンテンツを対象にしていますか? 憎悪を煽る、または暴力を誘発する犯罪に該当するコンテンツを含む違法行為のリスクを、プラットフォーム側が評価・緩和する義務を定めています。違法コンテンツの定義はOfcomが詳細なガイダンスを公表しています。

Q. Musk氏のリポストは違法と判断されたのですか? いずれも直接的に暴力を呼びかけたものではないとされており、違法性が確定したという報道はありません。Ofcomの書簡もMusk氏個人を名指ししたものではなく、プラットフォーム全般への通告です。

Q. 今後Xはどのような対応を取る可能性がありますか? Xは5月に英国当局に対し「ヘイト・テロコンテンツ」削減への取り組みを表明していたとされ、今回の書簡を受けて何らかの対応が示されるかが焦点となります。ただしOfcomの罰則制度はMetaから「不均衡」として提訴されており、執行能力自体に不確実性が残ります。

Q. 日本の読者にとってこのニュースの意味は? Xは日本でも主要なSNSの一つであり、所有者本人の拡散行動がタイムラインの可視性に影響を与え得る点は、地域を問わず関係します。各国でSNS規制が強化される流れの中で、英国Ofcomの今回の通告は規制側とプラットフォーム側の力関係を示す一例として注目されます。

出典

ポストLINEで送るはてブ
GD

GadgetDrop 編集部

スマホ・PC・AI・XRなど幅広いテクノロジーを、スペックの行間まで読む視点で解説します。速報から深掘り分析まで、テック選びと業界理解に役立つ情報をお届けしています。