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Louis Rossmann氏がBambu Labに挑発——禁止された3Dプリンタ用ファームウェアforkを自前で公開、$10,000の法的支援も

GadgetDrop 編集部9
Louis Rossmann氏がBambu Labに挑発——禁止された3Dプリンタ用ファームウェアforkを自前で公開、$10,000の法的支援も

修理する権利の活動家として知られるLouis Rossmann氏が、3DプリンタメーカーのBambu Labに対し真っ向から挑発を始めました。同社が差止請求で削除させたOrcaSlicerのforkを、自身のFULU Foundation GitHubで再ホスティングし、Tom's Hardwareが推定売上$1 billion(約1,500億円)に近づくと報じる同社に「訴えるなら訴えろ」と迫っています。これは単なる一企業と一開発者の対立ではなく、ユーザーが購入した3Dプリンタを本当に「所有」しているのか、メーカーがクラウド経由で機能を後から制限できる時代において「修理する権利」をどう守るのかという、コミュニティ全体を揺さぶる象徴的な事件となりつつあります。

Bambu Labのクラウド囲い込みとforkの誕生

事の発端は、Bambu Labが2025年初頭に自社製3Dプリンタからダイレクトクラウド接続機能を取り除いたことにあります。3Dプリンタコミュニティの多くは、この動きを「ユーザーの庭の門に鍵をかける」第一歩と受け止めました。

独立系開発者のPawel Jarczak氏は、奪われたクラウド接続機能を復元することを目的とした「OrcaSlicer-BambuLab」というforkを公開しました。しかしBambu Labは同氏に差止請求(cease-and-desist)を送付し、Jarczak氏はプロジェクトを取り下げる選択をしました。

Jarczak氏自身は、forkはBambu Lab自身のリポジトリで公開されているAGPLライセンスのコードのみを使っていると主張していますが、巨大企業との法廷闘争を望まないとして取り下げに応じています。

Rossmann氏の挑発と$10,000の法的支援

ここで動いたのがLouis Rossmann氏です。約250万人のYouTubeフォロワーを持つ同氏は、新たな動画でforkを自身のFULU(Freedom from Unethical Limitations)Foundation GitHubにホストし直したと発表しました。

さらに次のような支援策も打ち出しています。

  • Jarczak氏がコードを公開し続けるなら$10,000(約150万円)の法的支援を提供する
  • 250万人のフォロワーに対して、同じく支援を呼びかける

支援・ボイコット表明者の動き

Rossmann氏の呼びかけに呼応する形で、複数の著名クリエイター・企業が動きを見せています。

  • Louis Rossmann氏(YouTubeフォロワー約250万人):forkを自身のFULU Foundation GitHubに再ホスト、$10,000の法的支援を表明
  • Gamers Nexus:Jarczak氏のOrcaSlicer-BambuLabコードを自社のGitHubにホストし、追加で$10,000を法的基金として拠出
  • Jeff Geerling氏(オープンソースソフトウェアエンジニア、Raspberry Piファン、登録者約100万人、Bambu Lab P1Sオーナー):今後Bambu Labのプリンタは購入しないとYouTubeで表明
  • Snapmaker:オープンソースKlipperを搭載するツールチェンジャー「Snapmaker U1」をJarczak氏に寄贈

Snapmakerは機材提供で支援、Bambu Labは「クラウドは別」と反論

Jarczak氏は元々、プロジェクトのテスト用にKlipperベースの3Dプリンタを購入するため$500(約7万8千円)というささやかなクラウドファンディングを行っていました。これに対し、SnapmakerがオープンソースのKlipperを搭載するツールチェンジャー「Snapmaker U1」を寄贈する形で支援に加わりました。

SnapmakerのPR責任者Blayne Sapelli氏はTom's Hardwareに対し、Discordのプライベートメッセージで次のようにコメントしています。

「我々は、創造を民主化するというミッションに貢献するクリエイター、開発者、メイカーを支援している。オープンソースプロジェクトを開発し、3Dプリンタやメイカー向けハードウェアの境界を押し広げる存在を歓迎し、機材、資金援助、エンジニアリングリソースを幅広いプロジェクトに提供してきた」

一方のBambu Labは、「Setting the record straight on Cloud Access and Community」と題したブログ記事で見解を示しています。同社はBambu StudioがAGPL-3.0ライセンスのオープンソースプロジェクトであり、ユーザーが自由に改変できることは認めた上で、次のように主張しています。

「コードのライセンスは、当社のクラウドインフラへのパスではない」

Bambu Labは、Jarczak氏のforkがネットワーク通信に偽装したアイデンティティメタデータを注入し、公式のBambu Studioクライアントになりすましてサーバーと通信した点が一線を越えていると説明しています。

同社はまた、クラウドを使いたくないユーザー向けにBambu StudioをLAN ModeまたはDeveloper Modeで動かせると改めて案内した上で、ハードウェア・ソフトウェア双方のセキュリティ脆弱性を正規ルートで報告した利用者に報奨を出す「Bug Bounty Program」への参加を呼びかけました。ただし、報奨金額は明示されていません。

あなたのBambu Labは今後どうなる?

今回の騒動は、単なる一企業と一開発者の対立にとどまらず、ハードウェアの「所有」とは何かという根本的な問いを再燃させています。AGPLライセンス下の派生物に対して企業がクラウド接続を理由に差止を行うことの是非、メーカーがファームウェア・クラウド経由で機能を後から取り除けることの是非など、論点は多岐にわたります。

Bambu Lab機種を所有しているユーザーや購入を検討しているユーザーにとっては、現時点では以下が判断材料になります。

  • クラウドを介さない運用を望むならLAN Mode/Developer Modeで運用できる
  • 公式以外のクライアントでクラウドへ接続する用途は、同社の方針上は今後も制限される見込み
  • Snapmakerなど、Klipperベースのオープン路線を打ち出すメーカーへの注目度も今後高まりそうです

リーク・推測の話ではなく、企業の公式姿勢と著名クリエイターの動きが噛み合っている案件なので、続報を追う価値のあるテーマです。

Authorization Controlの段階的拡大とBambu Labの追加譲歩

元記事で触れられたX1シリーズ以降、認証制御の波は廉価機にも及んでいます。2025年6月にはP-Series向けfirmware 01.08.02.00とA-Series向け01.05.00.00がロールアウトされ、Orca Slicerなど非公式サードパーティソフトとの通信を遮断する仕組みが実装されました。Orca Slicerの開発者SoftFever氏は、Bambu Connectの採用を「不要であり、ユーザーに実質的な利益はない」として公に拒否しています。

コミュニティ反発を受けた緩和策

  • Developer Modeの追加により、上級ユーザーはBambu Connectをバイパスし、MQTTやFTPなどレガシープロトコルを使ったオープンソーススライサー・自動化スクリプトとの統合が可能になりました
  • ファームウェアのロールバックもユーザー側で許容されています
  • 同社はBambu Farm Managerというローカルネットワーク管理ソフトも投入し、クラウド接続なしで複数台のプリンタを管理できる機能を提供しています。現在P1、A1、X1Cに対応し、H2Dは2025年Q4対応予定です

競合メーカーや業界からの牽制と地政学的論点

今回の論争は、単なるユーザーと一企業の対立を超え、業界の地政学的構造にも波及しています。Prusa ResearchのCEO Josef Prusa氏はLinkedInで「3DP業界がどこへ向かっているのか不安だ──データの支配権の問題だ」とコメントしました。さらにPrusa氏は中国国家情報法第7条に言及し、すべての組織と市民が国家情報活動に協力する義務を負う点に懸念を示すとともに、中国政府による補助金や3D印刷産業の戦略的指定にも触れ「動機を考えざるを得ない」と述べています。

業界全体への波及

PrusaやCrealityといった競合メーカーがオープンソースファームウェアとコミュニティ主導の開発を強化しており、多くのユーザーが次に購入するプリンタを再検討しています。資金面ではBambu Labが中国の投資ファームIDG Capital(過去に中国防衛部門との関わりが指摘されている)から資金提供を受けている点も、欧米の機関ユーザーから注視されています。今回のRossmann氏による挑発は、こうした既存の不信感の上に成立しており、単なる法的論争にとどまらない政治的含意を帯びる可能性があります。

Q&A

Q. Louis Rossmann氏のforkは今もダウンロードできるのですか? 記事時点では、同氏のFULU Foundation GitHub、およびGamers NexusのGitHubで「OrcaSlicer-BambuLab」のコードがホストされていると説明されています。元開発者のJarczak氏自身は差止請求を受けてプロジェクトを取り下げています。

Q. Bambu Labはオープンソースを否定しているのですか? 同社はBambu StudioがAGPL-3.0ライセンスのオープンソースプロジェクトであり、改変は自由であると認めています。問題視しているのは、改変版が公式クライアントになりすました形でBambu Labのクラウドサーバーに接続する行為であり、「コードのライセンスはクラウドインフラへのパスではない」と説明しています。

Q. Bambu Lab製プリンタはクラウドなしで使えますか? Bambu Labは、Bambu StudioをLAN ModeまたはDeveloper Modeで動かせば、同社のクラウドネットワークと通信せずに使用可能だと案内しています。クラウド連携を避けたいユーザーにはこれらが公式の選択肢となります。ただし、公式クライアントを介さず同社のクラウドへ接続する用途は今回の係争点であり、認められていません。

出典

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