英国政府が16歳未満を対象としたSNS利用禁止措置を発表したが、VPNによる回避の可能性をめぐり政界・専門家の間で見解が割れている。Reform UK党首のNigel Farage氏は禁止令が「機能しない可能性が高い」と表明した一方、Keir Starmer首相は執行可能だと強調している。
Farage氏が指摘する「VPN大量普及」という抜け穴
Starmer首相がSNS禁止令を発表した直後、Farage氏はXに投稿し、禁止措置は「善意によるものではあるが」、VPNの「大量普及」により機能しない可能性が高いと述べた。さらに「裏口からデジタルIDが導入される結果を招く」とも警告している。
VPNはIPアドレスを変更し、ユーザーの見かけ上の所在地を偽装できる。英国ユーザーが英国外に拠点を置くように見せかけることで、英国向けの年齢制限チェックを回避できる可能性があるというのがFarage氏の主張だ。
これに対してStarmer首相は記者団に対し、「一部の子どもが回避しようとする、あるいは実際に回避するかもしれないとしても、それは禁止措置を取らない理由にはならない。当局は執行できる」と述べ、法の実効性を主張した。
VPNが実際に通用するかは「プラットフォーム次第」
TechRadarの報道によると、VPNや類似ツールが禁止を回避できるかどうかは、各SNSプラットフォームがどのように年齢確認を実装するかに依存するとされている。つまり、あるサービスでは通用し、別のサービスでは通用しないという状況が生じる可能性がある。
プラットフォーム側は複数の手法でユーザーの実際の所在地を特定できるとされており、具体的にはネットワークデータ、SIMカード情報、アプリ内GPS追跡などが挙げられている。年齢確認がApp Storeやデバイスレベルで実施される場合、VPNでの回避は機能しない可能性が高い。
Open Rights GroupのPlatform Power and Freedom of Expression Programme ManagerであるJames Baker氏はTechRadarに対し、若者が禁止令を回避する手段は「VPN接続を必要としないものも含め多数ある」と述べた。「オーストラリアの事例では、多くの若者が顔による年齢推定システムをだましたり、他人の身分証明書を借りることで年齢確認を突破したことが示されている」とも話している。
禁止対象と施行スケジュール
今回の禁止令の対象は、英国内で運営される「ユーザー間のパブリックなやり取りを可能にするプラットフォーム」とされており、Snapchat・TikTok・YouTube・X・Instagram・Facebookおよびゲームプラットフォームが含まれる。一方でWhatsAppやSignalといったメッセージングサービスは禁止令の対象外だ。
施行は2027年春を予定している。法律はオーストラリアのモデルを参考にしつつ「単純な禁止令を超えた」内容を目指すとされており、16歳未満との見知らぬ人とのやり取りやライブ配信のブロックも含まれる。18歳未満を対象とした利用時間帯の制限や無限スクロールの強制停止についても議論が進んでおり、詳細は7月に発表される見込みだ。
禁止令をプラットフォームがどのように執行するかの具体的な仕組みは、現時点では明らかにされておらず、強制的な年齢確認の強化が示唆されるにとどまっている。
現時点では禁止令の詳細が固まっていない部分も多く、VPNを含む回避手段の実効性は続報を待って判断するのが妥当だ。
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先行するオーストラリアの施行実績が示す回避の実態
英国が参考にすると明言したオーストラリアの法律は2025年12月10日に施行され、12月中旬までに470万件の16歳未満アカウントが対象プラットフォームから削除されています。一方で2026年3月にeSafety委員会が公表した初のコンプライアンス報告書は、運用面の課題を具体的に列挙しています。
- 16歳未満への通知文言が、年齢に満たないにもかかわらず年齢保証の試行を促す設計になっている
- 一部プラットフォームが同一の年齢保証手法での繰り返し試行を許容している
- 年齢制限対象アカウントの通報経路がアクセス困難
- 一部事業者が16歳未満のアカウント保有防止に十分な措置を講じていない
さらに2026年4月時点の調査では、親の約3分の1が16歳未満の子が依然としてSNSアカウントを保有していると回答し、TikTok・YouTube・InstagramはオーストラリアでもなおSNS年齢未満ユーザーの半数超を保持していると報じられています。Facebook・Instagram・Snapchat・TikTok・YouTubeは「潜在的非遵守」として調査対象になっています。
欧州全体に広がる年齢制限の連動と英国の制度的足場
英国の動きは欧州各国の同時並行的な年齢規制強化と歩調を合わせています。欧州議会は2026年、SNSおよびAIツールの最低利用年齢を16歳とする非拘束決議を483票で可決しました。各国の動向は以下のとおりです。
| 国 | 内容 |
|---|---|
| フランス | 2026年1月、15歳未満の新規拒否と既存アカウント削除を国民議会で可決 |
| ドイツ | 上院が14歳未満禁止・16歳未満制限を要請、Merz首相も支持 |
| スペイン | Sánchez首相が16歳未満禁止と堅牢な年齢確認導入を表明 |
| オランダ | 15歳未満禁止をプライバシー配慮型年齢確認で検討中 |
| ノルウェー | 2026年中に16歳基準の法案を議会へ提出予定 |
執行面では、Ofcomが2026年3月12日に主要プラットフォームへ「高度に効果的な年齢保証」の実施を求める書簡を送付し、4月30日までに対応計画の回答を要求しています。罰金算定が世界売上に連動する仕組みに対しては、Metaが2026年5月に高等法院へ司法審査を申し立てており、執行枠組み自体の法的争いも進行しています。
<!-- ENRICH:END -->Q&A
Q. 英国の16歳未満SNS禁止令はいつから施行されるのか? 2027年春に施行される予定だ。対象はSnapchat・TikTok・YouTube・X・Instagram・FacebookなどのSNSおよびゲームプラットフォームで、WhatsAppやSignalは対象外となっている。
Q. VPNを使えば禁止令を回避できるのか? TechRadarによると、回避できるかどうかは各プラットフォームの年齢確認の実装方法に依存するため、一概には言えない。App Storeやデバイスレベルで確認が行われる場合は回避が難しく、VPN以外にも顔認証のだましや他人の身分証明書の借用といった手段が使われる可能性もあるとOpen Rights Groupは指摘している。
出典
- TechRadar — Nigel Farage says UK's teen social media ban is 'unlikely to work' — but will VPNs really help children get around the restrictions?
- The Conversation — Australia has already banned social media for under 16s – here's what the UK can learn from the experience
- Euronews — EU countries push under-15 social media ban, Brussels presents age verification app