米国地質調査所(USGS)が、アパラチア地方のペグマタイト岩層に約230万メートルトンのリチウム酸化物が埋蔵されている可能性を示す推計を発表しました。Fortuneの報道によると、これは米国の近年のリチウム輸入需要を328年分代替できる規模に相当するとされています。ただし、採掘・精製インフラの整備という大きな課題が残っており、発見が即座に生産につながるわけではありません。
スマートフォン5,000億台分・EV1億3,000万台分に相当する可能性
USGSの推計によると、アパラチア地方のペグマタイト層(地下深部で冷却・結晶化の過程で有価元素を閉じ込める粗粒の花崗岩状岩石)に埋蔵されているリチウム酸化物は約230万メートルトンに上る可能性があります。埋蔵地は主にノースカロライナ・サウスカロライナ両州(the Carolinas)の地下に集中しているとみられており、メイン州西部やニューハンプシャー州の地下にも追加の鉱床が存在すると推定されています。
商業規模での採掘が実現した場合、この資源はスマートフォン約5,000億台、あるいはノートパソコンやタブレットを数十億台、さらには電気自動車(EV)約1億3,000万台分のバッテリーを賄える可能性があるとされています。いずれも「商業規模での回収が実現した場合」という条件付きの試算です。
現状の米国リチウム生産は世界シェアわずか約0.3%
今回の発見が注目される背景には、米国の現状のリチウム生産能力の低さがあります。米国の直近のリチウム生産量は約610メートルトンにとどまり、世界生産全体に占めるシェアはわずか約0.3%です。精製や大規模なバッテリー製造の多くは依然として海外で行われており、特に中国がスマートフォンからEV、データセンターのバックアップシステムに至る幅広い用途向けのリチウムイオン電池完成品製造において支配的な地位を占めています。
リチウムイオン技術への依存度は高まる一方であり、サプライチェーンの安定確保は米国にとって喫緊の課題となっています。
「発見」と「生産」の間にある高い壁
TechRadarが伝えるところでは、業界の専門家たちは「発見だけでは生産を保証しない」と口をそろえています。精製能力の確保、環境許可の取得、インフラ整備といった要素が、資源が実際に市場へ届くまでの速度を左右するためです。
アーカンソー州では、化学的抽出手法を用いた国内生産能力の拡大に向けて、政府支援の資金調達や民間投資プロジェクトがすでに進行中とされています。
なお、2025年12月にはネバダ・オレゴン州境のマクダーミット・カルデラでも、リチウム含有粘土層に2,000万〜4,000万メートルトンのリチウム含有物質が存在する可能性があると地質調査で示されたと報じられています。火山灰の堆積と熱水活動によってリチウムが濃縮された地層で、一部は露天掘りが可能な深さに位置しているとされています。
Q&A
Q. アパラチアのリチウムはいつ採掘できるようになりますか? 現時点では具体的な商業生産の開始時期は確認されていません。採掘には精製設備の整備、環境許可の取得、インフラ構築が必要であり、発見が即座に生産につながるわけではないと専門家は指摘しています。
Q. このリチウム発見は中国のバッテリー市場支配にどう影響しますか? 中国はリチウムイオン電池の完成品製造において現在も支配的な地位にあります。アパラチアの資源が商業規模で採掘・精製できるようになれば、中国のバッテリーに対する支配力を弱める可能性があると専門家は語っています。ただし、実現には長期的な投資と体制整備が必要です。
Q. 今回の推計はどこが発表したものですか? 米国地質調査所(USGS)によるものです。埋蔵量の推計値は約230万メートルトンとされており、主にノースカロライナ・サウスカロライナ両州を含む東部米国のペグマタイト層に分布すると推定されています。