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Intel「Crescent Island」AI GPU基板写真リーク——HBMではなくLPDDR5X 20枚で160GB搭載か

GadgetDrop 編集部8
Intel「Crescent Island」AI GPU基板写真リーク——HBMではなくLPDDR5X 20枚で160GB搭載か

HBMではなく、LPDDR5X—— IntelのAI GPU「Crescent Island」のPCB写真がXに流出し、AI GPUとしては異例のメモリ選択が明らかになりました。シングルGPU構成にLPDDR5Xモジュール20枚で合計160GB、世界的なHBM不足のなかでIntelが採った設計判断が、PCB写真から読み取れるとされています。

要点は次の3つです。

  • メモリは160GB(LPDDR5X 8GBモジュール×20枚) ——HBMは不採用
  • 最大メモリ帯域は1TB/sを十分下回る試算 ——Nvidia H200の約5TB/sとは大きな差
  • AI GPUとしてLPDDR5Xを採用するのは初とTom's Hardwareは報じている

リークされたPCB写真が示すレイアウト

今回の情報は、Xユーザーの@yuuki_ans氏が2026年5月19日に投稿したCrescent IslandのPCBの表裏写真によるものです。Tom's Hardwareは、この画像がGPU・VRAM・電源回路の配置を明らかにしていると報じています。非公式の情報源からのリーク情報のため、最終製品の仕様は変わる可能性があります。

写真からは、以下の構成が読み取れるとされています。

  • 中央に大型のシングルGPUソケットを配置(PCIe x16スロットの幅をほぼ占有)
  • LPDDR5Xモジュール用パッドが表面に12枚分、裏面に8枚分(合計20枚)
  • 右側に16-pin 12V-2x6電源コネクタを1基
  • 19フェーズの電源回路

Tom's Hardwareは、デュアルGPU構成ではなくシングルGPU構成が採られたことが今回の写真で確認されたと伝えています。

HBM不足が設計を変えた——LPDDR5X採用の背景

Crescent IslandはIntelのXe3PアーキテクチャをベースにしたAI向けGPUで、最大の特徴はHBMではなくLPDDR5Xを採用している点です。Tom's Hardwareは、これが実現すればCrescent IslandはLPDDR5Xを採用する初のAI GPUになると伝えています。合計160GBのメモリ容量は、現在市場で入手可能なLPDDR5Xの最高容量である8GBモジュールを20枚使う計算になります。

LPDDR5Xを選んだ背景には、HBMの世界的な供給不足があるとTom's Hardwareは指摘しています。同メディアは、HBMが現在進行中のメモリ不足危機の中心にあり、GPUメーカーにとって最も確保が難しい部材だと報じています。そのうえで、Intelがより遅いメモリを選んだのは製造コスト削減のためだとも伝えています。Crescent Islandは、HBM不足という外部要因が設計判断に直接影響したケースと位置づけられるとの見方もあります。

帯域を捨てて供給を取る——H200との5倍差

メモリ帯域は明確なトレードオフになる見込みです。Tom's Hardwareが640-bitのメモリインターフェースと10.7Gbps動作を仮定して試算したところ、最大メモリ帯域は1TB/sを十分下回るとされています。これはNvidia旧世代H200が誇る約5TB/sには遠く及ばない水準です。AI GPUの性能ではメモリ帯域が機械学習ワークロードの実行速度を大きく左右するため、LPDDR5XがどれほどCrescent Islandの実性能に影響するかが焦点になると同メディアは指摘しています。

AI推論サービスを提供する事業者や、データセンターの調達担当者にとっては、HBM不足を回避できる代替的な選択肢が示された格好です。一方で、帯域がボトルネックになりやすい学習用途や大規模モデルの実行で、どこまで実用的な性能を出せるかは未知数です。

競合製品と投入時期

Crescent Islandは空冷サーバー向けに位置付けられ、同じセグメントのNvidia・AMD製品と競合する見込みです。比較対象として挙げられているのは、144GBのHBM3Eを搭載するAMD MI350Pや、141GBのHBM3を搭載するNvidia H200 NVLです。容量面ではCrescent Islandの160GBが上回る一方、帯域面では大きく劣るという構図になります。

Intelは2026年下半期に顧客へのサンプリングを開始する計画とされています。実際にデータセンター市場に投入されるのはサンプリング後となるため、製品化のスケジュールやベンチマークの実測値については続報を待つ必要があります。

このリークが示すもの——供給優先のAI GPU設計

今回のリーク情報が正確であれば、Crescent Islandは「帯域を犠牲にしてでもメモリを確保する」というAI GPU業界では異例の設計判断の実例になります。LPDDR5XはHBMより入手しやすく、生産能力に左右されにくいメモリです。HBM不足が長期化するなかで、Intelが空冷サーバー市場で確実に出荷できる製品を狙ったとの見方もありますが、これは公式に表明された戦略ではありません。

一方、AI推論や学習の性能はメモリ帯域に強く依存するため、LPDDR5Xを採用したGPUがどこまで実用的な性能を発揮できるかは現時点では明らかにされていません。実機ベンチマークが公開されるまでは、価格と供給の優位性で勝負する製品なのか、性能面でも一定の競争力を持つ製品なのかは判断が難しい状況です。

サンプリング開始予定の2026年下半期に向けて、Intelからの公式発表とサードパーティのベンチマーク結果が次の焦点になります。

Xe3Pアーキテクチャの行き先——ゲーミング撤退とデータセンター集中

Crescent Islandが採用するXe3Pは、もともと消費者向けにも展開が計画されていたアーキテクチャです。Intelは消費者向けCelestialゲーミングGPUへのXe3P採用を取りやめ、製品自体をキャンセルしたうえで、このアーキテクチャをCrescent Islandに転用する方針へ切り替えました。

データセンター側だけでなく、Xe3Pは複数の階層に展開される設計です。

  • クライアント向けには次世代Arc C-Seriesに採用予定で、統合GPUからデータセンターAI GPUまでスケールする構造
  • Intelはヘテロジニアスなオープン統一ソフトウェアスタックを既存のArc Pro B-seriesで評価しており、将来の世代が早期に最適化を取り込める設計
  • PCB上には18フェーズVRMのうち約13フェーズがXe3Pプロセッサに割り当てられ、BMCコントローラも実装されエンタープライズ向けのリモート管理機能に対応

性能やクロックなどの詳細は未公開ですが、Intelはすでにサンプルを所有しており、OCPカンファレンスやSC25といった業界イベントで性能関連の追加情報が示される可能性があります。

HBM危機の規模——なぜ「遅いメモリ」が戦略になりうるのか

LPDDR5X採用の意義は、HBM不足の市場規模を踏まえると鮮明になります。HBM需要は2023年から2026年にかけて5倍に拡大した一方、供給は年50〜60%しか伸びておらず、需要と供給のギャップは現状の投資ペースでは2028〜2029年まで完全には埋まらない見通しです。

指標2026年の状況
データセンターのメモリ消費比率最大70%
データセンターGPUのリードタイム36〜52週
HBM 1GB当たりのウェハ消費量標準DRAMの3〜4倍
カスタムASIC出荷成長率44.6%(GPUは16.1%)

IDCはこの状況を典型的な循環不足ではなく「恒久的かつ戦略的な再配分の可能性」と分類しています。さらにSamsungが12層HBM3EでNVIDIAの認定基準を満たせず、世界最大のメモリメーカーが三番手に後退してボトルネックが一段と狭まる事態も発生しており、HBMを回避する設計判断は単なる妥協ではなく、出荷可能性を確保する合理的な戦略として位置づけられます。

Q&A

Q. なぜIntelはHBMを採用しなかったのですか? Tom's Hardwareは、HBMの世界的な供給不足のなかでIntelが製造コスト削減のためにLPDDR5Xを選んだと報じています。HBMはGPUメーカーにとって最も確保が難しい部材だと同メディアは指摘しています。

Q. LPDDR5XでもAIの学習用途に使えるのですか? 公開情報の範囲では、Crescent Islandの帯域は1TB/sを十分下回る試算とされており、約5TB/sのNvidia H200と比べて大きく劣ります。学習用途での実用性は実機ベンチマークが公開されるまで判断が難しい状況です。

Q. いつ実機が登場しますか? Intelは2026年下半期に顧客向けサンプリングを開始する計画とされています。実際の製品出荷時期はその後になるため、現時点では明らかにされていません。

出典

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GadgetDrop 編集部

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