中国発と疑われるChatGPTアカウントが排除された——しかし本当の論点は、米国の電気料金と水資源にあるのかもしれません。OpenAIが2026年6月に公開したレポートで、中国発と疑われるChatGPTアカウント2グループを排除したと報告しました。BGRによると、これらのアカウントは米国内で進むデータセンター拡張をめぐる議論に介入し、世論を操作しようとしていた可能性があるとされています。ただし、BGRはこの報告自体の読み方にも注意を促しています。AIインフラ拡張のコストをめぐる議論は、日本でも同様に起こり得る論点であり、米国の事例は決して対岸の火事ではありません。
排除された2グループが拡散していた主張
OpenAIは2026年6月のレポートで、中国発と疑われる2つのアカウントグループをChatGPTから排除したと明らかにしました。同社はこれらを「隠れた影響工作と見られる活動(apparent covert influence operation)」を支援していたと説明しています。
BGRは、具体的な投稿内容について次のように整理しています。
- ソーシャルメディア上でコメントや画像を生成・拡散していた
- 「データセンターの建設は米国市民の電気料金をさらに引き上げる」と主張する内容が含まれていた
- 米国のAI拡張と関連政策をめぐる議論に介入する狙いがあったと見られる
ただし、OpenAI自身も「これらのキャンペーンは世論を動かすことに成功したとは見られない」と述べています。あくまで「疑い」段階の活動であり、中国政府の関与が断定されたわけではない点には注意が必要です。
データセンター反対論の本当の中身——電気料金と水資源
BGRは、OpenAIの報告書のトーンに慎重な見方を示しています。BGRは、OpenAIの書きぶりは米国内でのデータセンター反対論が中国の工作によって誇張されているかのような印象を与えかねないが、実際にはそれは正確ではないと指摘しています。
米国内の懸念には、Harvard Law Schoolによる分析など、研究機関による裏付けのある論点が含まれているとBGRは伝えています。電気料金が上昇しうる主な経路として、次の2点が挙げられています。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| インフラ整備コストの転嫁 | データセンター運用に必要な送配電インフラ拡張のコストが料金利用者に分散される可能性 |
| 需給バランスの変化 | 電力需要の急増に供給が追いつかない場合、卸電力市場の価格が上昇し小売料金にも波及 |
加えて、最重要の論点として水資源の問題があります。
- データセンターによっては、冷却のために1日あたり最大500万ガロンの水を使用するケースがある
- 電気料金上昇とあわせ、住民が実生活で直面している懸念
- 中国の工作とは関係なく存在する実体のある問題
データセンター推進企業が語る「工作疑惑」の温度差
BGRはさらに、OpenAIの報告を読む際の注意点として、同社自身がデータセンター拡張から利益を得る立場にあることを指摘しています。BGRは、AIインフラの拡張を進め自社の事業を守る責任を負う企業の発信は、外部の研究結果や住民の声と並べて評価すべきだと論じています。
その意味で今回のレポートは、「中国発と疑われるアカウントが排除された」という事実と、BGRが「反対世論の正当な根拠まで矮小化しているように読める書きぶり」と報じている側面が同居している、とBGRは整理しています。一方で、BGRは、影響工作の可能性そのものを否定する材料があるわけではなく、OpenAIが提示した知見が無意味になるわけではないとも指摘しています。
なおAIインフラのコスト構造をめぐる議論は、日本国内のクラウド事業者・電力事業者にとっても無縁ではなく、海外での論点整理は今後の参考になり得ます。続報や独立した第三者による検証を待ちつつ、単一の情報源だけで判断しないことが現時点では妥当な姿勢と言えるでしょう。
排除されたオペレーションの正式名称と多言語展開
OpenAIは今回の2つのアカウントグループに、それぞれ「Data Center Bandwagon」「Tech and Tariffs」というオペレーション名を与えていることが明らかになっています。CyberScoopやPC Gamerによれば、前者はAIデータセンターが電気料金に与える影響への懸念を中心に据え、後者は米国の関税や貿易制限を批判するコメントや政治風刺画を生成していたとされています。
- 生成物は簡体字中国語と英語のスローガン・コメント・風刺画が中心
- 出力リクエストにはイタリア語や日本語など他言語も含まれていた
- 活動時期は2025年後半から2026年初頭
さらにOpenAIは、この活動を中国国内の省レベル政府クライアントと取引する民間テクノロジー企業のSNSチームに紐づけたと説明しており、国家機関の直接関与ではなく民間請負の構造が浮かび上がっています。
1.4兆ドル投資と「米国人の78%が懸念」という世論の重み
データセンター反対論の背景にある経済データも、影響工作とは独立した規模で進行しています。Fortuneや業界レポートによれば、米エネルギー情報局(EIA)は2026年の住宅用電気料金が平均5.1%上昇すると見込んでおり、2021年比で累積約40%の上昇に達するとされています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 米電力会社のAIデータセンター向け投資計画(2030年まで) | 1.4兆ドル |
| 住宅利用者に転嫁される可能性のある負担 | 約7000億ドル |
| データセンターによる電気料金上昇を懸念する米国人 | 78%(2025年11月調査) |
| バージニア州で施設を料金上昇の原因と見る有権者 | 約4分の3 |
特にデータセンターが集中する北バージニア「Data Center Alley」では世論が先鋭化しており、影響工作の有無と切り離して既に強い反対基盤が形成されていることがうかがえます。
Q&A
Q. OpenAIは中国政府の関与を確認したのですか? いいえ、断定はしていません。OpenAIは「中国発と疑われる」アカウントを排除したと説明しており、影響工作と見られる活動を支援していたと述べる一方、中国政府の関与を確証として示したわけではありません。
Q. 排除されたアカウントはどの程度の規模でしたか? OpenAIは「2つのグループ」を排除したと公表していますが、それぞれの具体的なアカウント数や投稿数といった詳細はBGRの記事では明らかにされていません。詳細は出典元を参照してください。
Q. 米国でのデータセンター反対論は今回の工作によって作られたものですか? そう見るのは不正確です。電気料金の上昇懸念にはHarvard Law Schoolによる分析など独立した裏付けがあり、冷却用に1日最大500万ガロンの水を使う施設もあるなど、実体のある論点が反対論の中心にあるとBGRは伝えています。
Q. このニュースは日本の読者にとってどう関係しますか? AIデータセンターの電力・水資源コストはグローバルに共通する論点であり、AI普及の総コスト構造として、日本国内のクラウド・電力インフラ議論にも示唆を与え得ます。
出典
- BGR — Fake Chinese Accounts Are Reportedly Poisoning Americans' Stance On Data Centers, According To OpenAI
- CyberScoop — OpenAI: 'Likely' Chinese influence operation tried to use ChatGPT to stir debate on data centers
- Fortune — Americans' AI hate wave might just be gathering steam: Data centers could hike power costs in some states over 50% by 2030