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「バイブコーディング」で自分専用アプリを作る時代——The Vergeが描くパーソナルソフトウェア革命

GadgetDrop 編集部6
「バイブコーディング」で自分専用アプリを作る時代——The Vergeが描くパーソナルソフトウェア革命

「このアプリのここだけ変えられたら最高なのに」——そんな小さな不満を、月20ドル(約3,000円)のサブスクと半端なアイデアだけで自分専用アプリに変えられる時代が来たようです。The Vergeのエディター・アット・ラージであるDavid Pierce氏が、AIコーディングツールがもたらす「パーソナルソフトウェア革命」の実像をレポートしました。

Claude Codeが変えた「素人がアプリを作る」のハードル

The Vergeによると、転換点は2025年後半に訪れたとされています。AnthropicのClaudeモデルのアップデートにより、同社の「Claude Code」が、これまでの「うまく動けば驚き」のコード生成ツールから、「動かないときに驚く」レベルのツールへと進化したというのです。

OpenAI創業チームにいたAndrej Karpathy氏は、この新しい挙動を**「vibe coding(バイブコーディング)」**と呼びました。月20ドルのサブスクと曖昧なアイデアさえあれば、AIモデルが機能するソフトウェアを構築してくれる——うまくいかない箇所を言葉で説明すれば、Claude Codeがほぼ修正してくれる、というのが現状だと記事は伝えています。

この潮流を支えているのはClaude Codeだけではありません。記事ではOpenAIのCodex、GitHub Copilot、Cursor、Lovable、Replitなど、数多くのAIコーディングツールが言及されています。

「自家製アプリ」の実例——スパムから階段トラッカーまで

パーソナルソフトウェアの概念は、作家でテクノロジストのRobin Sloan氏が2020年に書いたブログ記事「An app can be a home-cooked meal(アプリは家庭料理になりうる)」が源流とされています。Sloan氏は家族用のメッセージングアプリを自作した理由として、こう述べました。

「突然のリデザインも、広告の洪水も、私たちには理解できないユーザー層を追いかけるピボットも起きない。いつか消える日が来るかもしれないが、それは私たち自身の決定だ」

Sloan氏自身は熟練したコーダーですが、現在はオリーブオイル会社の業務でAIを活用し、ShopifyとUSPSのデータを連携させて配送ラベルを自動生成するRubyスクリプトをClaude Codeで作ったと話しています。ただし「もし私がバスに轢かれたら、このスクリプトを動かせるのは私しかいないので会社の問題になる」と、属人化のリスクも率直に認めています。

The Vergeが取材した個人開発の例も多彩です。

  • ファンタジー野球の選手ランキング用CLIアプリ(Brendenさん)
  • 1990年代のゲーム「Transport Tycoon Deluxe」に再生可能エネルギーの概念を導入するスクリプト(Nathanさん)
  • Secret Santa(シークレットサンタ)の組み合わせ最適化ツール(Anthonyさん)
  • 裏庭の犬のフンの位置を記録するアプリ(Tuckerさん)
  • 片頭痛トラッカー(Allanさん)
  • 自宅の102段ある階段のどこに郵便配達員が荷物を置いたかを記録するアプリ(Brettさん)

いずれも「対象市場は1人、収益ポテンシャルは0ドル」と記事は表現しています。

App Storeとアプリ開発者数の急増

このムーブメントは統計にも表れています。The Informationの報道によると、Apple App Storeの新規アプリ数は2025年に30%増となり、約10年続いていた緩やかな減少傾向から反転しました。2024年末時点でApp Storeには約200万本のアプリがあり、バイブコーダーたちの参入により2026年末までにこの数が倍増する可能性もあると報じられています。

GitHubも2025年に過去最速の成長を記録し、新規ユーザーの**80%**が登録初週のうちにCopilotコーディングエージェントを利用しているとされています。Claude Codeの生みの親Boris Cherny氏はThe Vergeに対し、社内のセールスチームが同ツールを使い始めたのを見て「これはエンジニアだけのものではない」と確信したと語りました。

限界と「センス」の重要性

ただし、パーソナルソフトウェアには明確な限界もあります。

観点パーソナルソフトウェアの実情
サポートサポート窓口もカスタマーサービスもない
セキュリティ十分なテストもセキュリティ保証もない
業務利用大企業の業務システムを置き換える話ではない
デザイン現行のAIコーディングツールは優れたUI設計が苦手

NotionなどでAI製品を手がけるデザイナーのBrian Lovin氏は、「ほとんどのコーディングエージェントは良いインターフェースを書くのが下手だ」と述べ、Claude Codeが紫のグラデーション背景とハンバーガーメニュー風アイコンを多用する癖に言及しています。

Pierce氏自身、「Timetable」と名付けた自作アプリにアイコンを作らせたところ、出てきたPNG画像について「言いにくいんだけど、これお尻の穴に見えるよ」とClaudeに返答したエピソードも紹介されています。次の修正案もまた3本の横線だったそうです。

GitHub Nextに在籍するデザイナーのMaggie Appleton氏は、コミュニティのために必要なスキルを学ぶ人々を**「barefoot developers(裸足の開発者)」**と呼び、「プラグアンドプレイで組み合わせられる、オープンソースで質の高い基盤(プリミティブ)」が必要だと指摘しています。

NotionのCEO Ivan Zhao氏は、同社のアプローチについて「Notionは基本ブロックを提供しているので、AIはマクロを書くだけでよく、ソフトをゼロから書く必要がない」と説明しています。

Pierce氏の結論はシンプルです。これからの時代に最も重要なのは技術力ではなく**「taste(センス)」**——プロデューサーのRick Rubin氏が60 Minutesで語った「自分のセンスへの自信と、感じていることを表現する能力」だと記事は締めくくっています。

Q&A

Q. バイブコーディングを始めるには何が必要ですか? 記事によれば、月20ドル(約3,000円)程度のClaude Codeなどのサブスクリプションと、作りたいものの曖昧なアイデアがあれば始められるとされています。コードを完全に書ける必要はなく、エラーメッセージをコピペしてAIに修正を頼むスタイルでも動作するアプリは作れるとPierce氏は述べています。

Q. 作ったアプリを業務や他人に使わせることはできますか? The Vergeはこの点に慎重です。パーソナルソフトウェアにはサポート窓口もセキュリティ保証もなく、十分なテストも行われていません。大企業の業務システムを「マーケティング部門のバイブコーディング」で置き換えるという発想は「ほぼフィクションだ」と記事は明言しています。あくまで自分専用、もしくは家族・小規模コミュニティ向けの範囲で使うのが妥当な使い方と読めます。

Q. ChatGPTやGeminiでも同じことはできますか? 記事はClaude Code、OpenAIのCodex、GitHub Copilot、Cursor、Lovable、Replitなどを列挙していますが、各ツール間の機能差については詳細な比較は行われていません。Claude Code開発者のBoris Cherny氏のコメントが多く引かれていることから、現時点でPierce氏が中心に使っているのはClaude Codeだと読み取れます。

出典

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