週に数百万インストールを記録しているとされ、Fortune 500企業の大部分が本番環境で採用しているとされるオープンソースプロトコル「AG-UI」——その開発元であるスタートアップ「CopilotKit」が、シリーズAラウンドで2700万ドルの資金調達を完了したとTechCrunchが独占報道しました。リードインベスターはGlilot Capital、NFX、SignalFireの3社です。同社は、AIをチャットボットの枠から解き放ち、アプリのUI自体に組み込むアプローチを掲げています。
チャットボットUIの「もどかしさ」を解消する発想
多くのアプリが今日AIをチャットボットとして提供していますが、テキストベースのUIは必ずしも快適な体験につながりません。たとえば旅行アプリで旅程全体を組もうとしても、大量のテキストを読み解く必要があるケースがその典型です。
CopilotKitの共同創業者であるAtai Barkai氏とUli Barkai氏は、AIエージェントがアプリの内側に「住み込み」、ユーザーの操作を理解しながら動的なUIを生成するべきだと主張しています。
Atai氏はTechCrunchに対し、「エージェントはテキストのブロックだけでなく、自社がデザインしたインタラクティブなUIで返答できます」と語っています。具体例として、「収益をカテゴリ別に見せて」と頼んだ場合、長い段落ではなく自社デザインの円グラフが表示され、ユーザーがそれを操作できる——という体験を挙げています。開発者はUIの変更をどこまでエージェントに委ねるかを細かく制御でき、「ピクセルパーフェクト」な固定UIから、AIが自由に組み合わせる大まかなブロック提供まで選択できるとしています。
AG-UIプロトコルとエコシステムの広がり
同社の中核技術は、オープンソースの「AG-UI(Agent-UI)プロトコル」です。AIエージェントとWebブラウザやアプリなどのユーザーインターフェースを標準化された方法で接続・通信させるためのプロトコルで、ストリーミングチャット・フロントエンドツール呼び出し・状態共有といった機能を備え、人間が介在できる「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の仕組みを実現します。
AG-UIはすでに広く普及しており、Google・Microsoft・Amazon・OracleといったAIインフラの主要プロバイダーや、LangChain・Mastra・PydanticAI・Agnoなどの人気フレームワークがサポートしています。また、広く採用されているModel Context Protocol(MCP)やAgent2Agent(A2A)プロトコルとも連携して動作するとされています。
同社によると、CopilotKitとAG-UIは週に数百万インストールを記録しており、Fortune 500企業の大部分が本番環境でこのプロトコルとツールを使用している可能性があるとAtai氏は述べています。エンタープライズ顧客としてはDeutsche Telekom・Docusign・Cisco・S&P Globalなどの大手企業が名を連ねています。
競合との差別化——「オプション性」と「セルフホスティング」
こうした強固なエコシステムを背景に、同社はエンタープライズ市場での競争に臨んでいます。エンタープライズ向けAIエージェントツール市場では競争が激化しており、VercelのオープンソースAI SDKは開発者がAIアプリを構築するのを支援し、assistant-uiはAIチャットインターフェース向けのコンポーネントを提供します。一方、OpenAIのApps SDKはより豊かなインターフェース構築を可能にしますが、ChatGPT内でのみ利用可能という制約があります。
Atai氏はCopilotKitの差別化ポイントとして、特定のスタックに縛られない「水平型・エンタープライズフレンドリー」なアプローチを強調します。フルスタックのAIプラットフォームを提供するのではなく、企業がすでに使用しているエージェントフレームワーク・クラウドプロバイダー・バックエンドを問わずサポートすることを目指しているとのことです。
Atai氏はエンタープライズとの会話でほぼ必ずオプション性とセルフホスティングへの要望が出てくると語っており、Google・Amazon・Oracle・Microsoft・LangChain・Mastraのスタックをすでに使っている企業はそれを活かしながら選択肢を持ちたいと考えている可能性があるとしています。
今回の調達を機に、同社はセルフホスト可能なエンタープライズ向け製品「CopilotKit Enterprise Intelligence」もリリースします。AG-UIのオープンソースとしての中立性を維持しつつ、商用製品でエンタープライズ向けの強化機能を提供するという二層戦略とみられます。
シアトルを拠点とする同社は、今回調達した資金を活用してチームの拡大を図る計画です。
Q&A
Q. AG-UIとは何ですか?既存のMCPとどう違うのですか? AG-UIはAIエージェントとアプリのUI(ブラウザやアプリ画面)を接続・通信させるためのオープンソースプロトコルです。MCPやA2Aプロトコルと「並行して動作する」ものとして設計されており、競合ではなく補完関係にあります。両者の詳細な機能上の違いについては出典元を参照してください。
Q. CopilotKitのエンタープライズ製品は誰でも使えますか? 「CopilotKit Enterprise Intelligence」はセルフホスト可能なエンタープライズ向け製品として発表されています。オープンソースのAG-UIプロトコル自体は誰でも無償で利用できますが、エンタープライズ製品の具体的な料金・契約条件についてはソース記事に記載がなく、詳細は出典元を参照してください。