iOS 15で導入されたiCloud+の「Hide My Email」は、サービスごとに使い捨てのメールアドレスを発行し、不要になればいつでも遮断できる便利な機能です。広告主に自分のメインアドレスを渡さずに済み、受信トレイのコントロールも高まる——プライバシー保護と迷惑メール対策を両立できる仕組みです。しかし登場から5年が経った今も、生成されるアドレスは@icloud.comに固定され、Chromeからは新規エイリアスを直接作れず、機能の多くは「設定」アプリの奥に眠ったままです。9to5MacのMichael氏が提案する3つの改善案を整理します。
Passwordsアプリへの統合でアクセス性を高めてほしい
Hide My Emailは現状、主に「設定」アプリの中に存在し、メール入力欄でキーボードから新しいエイリアスを生成できるのはSafariやシステムアプリ、一部のサードパーティアプリに限られます。macOSではさらに使える場面が少ない状況です。
Appleはこれまで、iCloud Keychainのような機能も長らく裏側に隠していましたが、iOS 18でようやく「Passwords」という独立アプリが用意されました。Michael氏は、Hide My Emailを独立アプリにするのが最も合理的とは限らないとしつつ、Passwordsアプリの一部として組み込めば、キーボード統合が効かない場面でもエイリアスを作りやすくなる可能性があると提案しています。
- 現状:主に設定アプリ内、Safari・システムアプリ・一部サードパーティアプリのキーボード統合のみ
- 課題:macOSでは利用できる場面がさらに限られる
- 提案:Passwordsアプリへの統合でアクセス性を向上
ChromeとChromium系ブラウザでもエイリアスを生成したい
AppleはすでにChrome向けに「iCloud Passwords」拡張機能を提供しており、パスキー対応、iCloudの2要素認証コード対応、メッセージアプリからの自動入力連携など、年々機能が拡充されてきました。
しかし、Hide My EmailのエイリアスをChrome上のメール入力欄から直接生成する機能は提供されていません。Safariでは可能な操作がChromeではできないのです。Hide My Emailは有料のiCloud+加入者向けサービスである以上、ChromeやChromium系ブラウザでも同じように使えるようにしない理由は見当たらない——というのがMichael氏の指摘です。新規登録のたびにSafariへ切り替える手間が省ければ、日常的にChromeを使うユーザーの体験は大きく変わる可能性があります。
独自ドメインへの対応で「自分のアドレス」を保ちつつ送信者を遮断
3つ目はやや「あったらいいな」寄りの提案だとMichael氏自身も認めています。現状、Hide My Emailで生成されるアドレスはすべて@icloud.comドメインに固定されています。
一方で、iCloud Mailではすでにユーザー自身のカスタムドメインを使うことが可能です。理論的には、自分のドメインを使ったエイリアスをHide My Emailと連携させることもできるはずだ、というのがMichael氏の見方です。
| 項目 | 現状 | 提案 |
|---|---|---|
| 生成ドメイン | @icloud.com 固定 | 自分のカスタムドメインも選択可能に |
| プライバシー性 | 高い(追跡されにくい) | やや下がるが、送信元の遮断は引き続き可能 |
| メリット | 匿名性 | 好きなドメインを使いつつ送信者を遮断できる |
ドメインが特定されるためプライバシー面のメリットは薄れる可能性がありますが、迷惑な送信者だけを切り捨てる「インボックス管理」としての価値は残る、とMichael氏は述べています。
まとめ:日常の迷惑メールと追跡を減らす一歩先へ
3つの提案はいずれも、機能の根幹を変えるものではなく、既存の仕組みを「もう一歩」広げるアイデアです。Hide My Emailを使いこなせば、サービスごとに使い捨てアドレスを発行することで、漏えい元の特定や広告トラッキングの遮断、不要になった登録先の一括ブロックが容易になります。アクセス性の改善やChrome対応が進めば、こうした恩恵を受けられる場面が広がる可能性があります。
なお、これらはあくまで9to5Macによる提案であり、Appleが対応を表明したものではありません。現時点では「将来のiOS/macOSアップデートで改善があれば歓迎したい」程度に捉えておくのが妥当でしょう。
無料の「Sign in with Apple」経由と有料iCloud+版の違い
Hide My Emailを語る上で見落とされがちなのが、機能には実質2つのバージョンが存在する点です。Sign in with Apple(無料)は対応するアプリやサイトでApple IDを使ってアカウントを作成する際に自動でエイリアスを生成し、iCloud+(有料)はニュースレター登録やQRコードメニュー利用など任意の用途で無制限にランダムアドレスを手動作成できます。
ドメインと機能の差
- 無料版のドメイン:Sign in with Apple経由で発行されるアドレスは
@privaterelay.appleid.comドメインです - 有料版のドメイン:手動生成は
@icloud.com固定 - 送信可否:有料iCloud+加入者はMailアプリでFromフィールドからHide My Emailを選び新規メールを送れますが、無料版では届いたメールへの返信のみ可能です
なおAppleはリレー経由のメール内容を読まず、信頼されたメールプロバイダとして必要な標準的スパムフィルタリングのみを行うとしています。元記事で論点となっているドメイン固定の話は、実は「無料版か有料版か」によっても挙動が分かれているわけです。
Apple Pay・Wallet・サードパーティアプリへの広がり
Hide My Emailの利用シーンは、Safari以外にも着実に拡大しています。とくにApple Payとの連携は、ECサイトでの利用時に効果を発揮します。
| シーン | 対応バージョン | 操作 |
|---|---|---|
| Apple Pay支払いシート | iOS 17/iPadOS 17以降 | Contactをタップしてエイリアスを生成または再利用 |
| Wallet & Apple Pay設定 | iOS 17/iPadOS 17、macOS 14以降 | Email項目でHide My Emailをトグルオン |
| サードパーティアプリ | iOS 16/iPadOS 16以降 | メール欄をタップしキーボード上部から生成 |
ポイントは再利用ロジックで、同じアプリ・サイトでの後続購入には同一のエイリアスが使い回されます。これにより1サービスにつき1アドレスという紐付けが維持され、後で送信元を遮断する判断もしやすくなります。さらにiCloud.comのMailでは「Only Hide My Email」フィルターを適用し、エイリアス宛のメールだけを一覧表示することも可能です。Chromeでの生成は依然として未対応ですが、Apple純正環境内では選択肢が静かに増えているのが現状です。
Q&A
Q. Hide My EmailはiCloud+の無料機能ですか? いいえ、Hide My EmailはiCloud+(有料プラン)の機能として提供されています。
Q. ChromeでもHide My Emailのエイリアスを生成できますか? 現時点では、Chrome向けに提供されているiCloud Passwords拡張機能はパスキーや2要素認証コード、メッセージアプリからの自動入力などには対応していますが、Hide My Emailの新規エイリアスをChrome上のメール入力欄から直接生成する機能は提供されていません。9to5MacのMichael氏は、SafariでできることをChromeやChromium系ブラウザでも可能にすべきだと提案しています。
Q. 独自ドメインでHide My Emailを使えますか?
現時点では生成されるアドレスは@icloud.comに固定されています。iCloud Mail側ではカスタムドメインが使えるため、将来的に連携できる可能性があるという提案にとどまります。