NokiaとMicrosoftが開発し、発売直前にキャンセルされたスマートウォッチ「Moonraker(型番LS-50)」が、Windows Centralの10周年振り返り記事で再び脚光を浴びています。Windows PhoneのMetroデザインを腕元に体現した同デバイスは、Apple Watchがスマートウォッチカテゴリーを塗り替えるよりも前に存在していました。
Nokiaが生んだスマートウォッチ——Moonrakerとはどんなデバイスだったか
MoonrakerはNokiaが開発したスマートウォッチで、型番はLS-50。Windows Phoneのモダンデザインの美学を色濃く取り入れたデバイスだったと、The Vergeが情報源の発言として報じている。外観はWindows PhoneのModern UI(いわゆるMetroデザイン)に似たインターフェースを持っていたとされている。
操作面では、腕を持ち上げるとテキストメッセージが読め、腕を下げるとディスプレイが消灯するという機能が計画されていた。
このデバイスの存在が世に知られるきっかけとなったのは、Microsoftのデザイン社員Pei-Chi HsieのTumblrアカウントに掲載されていた画像だ。著名リーカーのEvan Blass(@evleaks)が2015年6月12日にこれをSNSでシェアし広く知れ渡った後、該当画像はTumblrから削除されている。
MWCでデモ済み、Lumia 930との同時発表まで計画が進んでいた
The Vergeが入手した情報によると、Nokiaはワーキングプロトタイプをすでに完成させており、Mobile World Congress(MWC)において潜在的な顧客向けのデモも実施していたとされている。発表のタイミングはLumia 930との同時公開が計画されていたという。
The Vergeの情報源はこう述べている。「フィンランドのNokiaは、Windows Phoneのモダンデザインの美学を多く取り入れた『Moonraker』スマートウォッチを開発しており、ワーキングプロトタイプがMWCで潜在的な顧客に披露されていた。NokiaはこのスマートウォッチをLumia 930と同時に発表する計画だったが、MicrosoftがNokiaのフォンビジネスを買収した時期にキャンセルされた」
開発がかなりの完成度に達した段階にあったことは、MWCでの顧客向けデモという事実からも読み取れる。
Nokia買収がキャンセルのトリガーに
MicrosoftはNokiaのデバイス・サービス部門を買収した。The Vergeの情報源によれば、その買収のタイミングがMoonrakerの消滅と重なっている。ハードウェア戦略の転換の中でMoonrakerはお蔵入りとなり、以後公式に発表されることはなかった。
Windows Centralはこれと並行して存在した別のキャンセル案件にも言及している。ゲーマー向けフィットネスウォッチとして開発が進んでいた「Xbox Joule」がそれで、Windows CentralはそのプロトタイプをMoonrakerより後に実際に入手したとしている。
「業界が離陸する直前に放棄された」——10年後に語られる惜しさ
Windows CentralのEditor-in-ChiefであるDaniel Rubino氏は今回の10周年に際し、次のように述べている。
「振り返ると、Moonrakerはあり得たかもしれない別のタイムラインへの窓のように感じられる。個性と色彩を持ち、MetroデザインランゲージをUIに体現したスマートウォッチだ。発売はされなかったが、Apple Watchがカテゴリーを塗り替えるよりも何年も前に、Microsoftがウェアラブル戦略を持ち得るほど近づいていたことを示していた。10年後の今もMoonrakerは、野心的でスタイリッシュ、しかし業界が離陸する直前に最終的には放棄されたというWindows Phone時代を象徴する『あり得たかもしれない』瞬間のひとつとして残っている」
当時の画像の発掘から10年、このデバイスが再び語られる背景には、スマートウォッチ市場が今や成熟期を迎えているという現実がある。Moonrakerが示したのは、Microsoftが正しい方向を向いていたにもかかわらず、自社買収の判断がその芽を摘んだという歴史の皮肉だ。
現時点でMicrosoftがMoonrakerの系譜を継ぐウェアラブルを開発しているとの情報はない。Moonrakerは「製品」としてではなく、Windows Phone時代の象徴として記憶されることになる。
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Microsoftの現在のウェアラブル戦略——腕時計ではなく「AIバッジ」へ
Moonrakerの計画頓挫から10年を経て、Microsoftのウェアラブル戦略は腕時計とは異なる方向に進化しています。BGRの報道によると、MicrosoftはBuildにおいて「Project Solara」と呼ばれるAIバッジ型ウェアラブルを披露しました。オフィスで見かけるランヤード型バッジに似た形状で提示され、職場向けのAIデバイスとして位置付けられています。
- Project SolaraはAI時代におけるコンピューティング全体の再構想を目指す取り組みとされています
- Amazon Echo Showに類似したスマートディスプレイ「Desk Concept」も同時に公開されています
- 現時点でMicrosoftがスマートウォッチを市場投入するという保証はなく、同社はその件についてコメントを避けています
腕に巻く端末ではなく首から下げるバッジ型デバイスをAIインターフェースの出発点に据えた点は、MoonrakerやMicrosoft Band時代とは明確に異なる方向転換を示しています。
スマートウォッチ市場の成熟——Moonrakerが狙えなかった巨大市場の現在地
Moonrakerが「業界が離陸する直前」に放棄されたと評される背景には、その後の市場拡大があります。Coherent Market Insightsによれば、2026年のスマートウォッチ市場規模は約406.1億ドルに達すると推計されています。
| 区分 | シェア(2026年予測) |
|---|---|
| Apple(真のスマートウォッチ市場) | 39% |
| Huawei | 31% |
| Samsung | 12% |
| Android Wear(OS別・金額ベース) | 54.9% |
| watchOS(北米・台数ベース) | 52.68% |
SammyGuruの集計ではAppleが首位を維持する一方、Huaweiが31%まで肉薄しSamsungを上回る構図が示されています。GMI Insightsの分析ではOS別の金額シェアでAndroid Wearが54.9%とトップに立ち、北米に限ればwatchOSが52.68%でリードするなど、地域とOSで競争構図が分かれていることが分かります。
<!-- ENRICH:END -->Q&A
Q. MicrosoftのMoonrakerはなぜキャンセルされたのか? The Vergeが情報源から得た情報によると、MicrosoftによるNokiaのフォンビジネス買収のタイミングでキャンセルされた。Microsoftは公式な理由を述べていない。
Q. Moonrakerの実機や製品版は現在も存在するのか? 発売はされておらず、一般購入はできない。確認されているのはワーキングプロトタイプの存在のみ。デバイスの画像はMicrosoftのデザイン社員のTumblrに一時掲載されていたが、現在は削除されている。