TSMCが建設中の12拠点の先には、DigiTimesの報道によれば2030年または2031年より早くは始まらない可能性があるとされる1nmがあります。2nmの第1陣が本年中に立ち上がる見込みのなかで、台湾の半導体大手はサブ2nmの天井を越え、1nm生産の地ならしに着手したと報じられています。Samsungとの差は微細化ロードマップの面でさらに広がる構えです。
12拠点を同時建設、A14と1nmまで見据えた拡張計画
DigiTimesによれば、TSMCは現在12拠点の工場を建設中で、これらは2nm(N2およびN2P)やA14(1.4nm)といった先端ノードのハブとして稼働する計画だとされています。注目されているのは、その先にある1nm技術の準備(preparations for 1nm technology)がこれらの拠点の延長線上で始まっているとされる点です。1nm自体は現時点では拡張計画・用地取得段階に位置づけられており、12拠点で稼働する先端ノードと並列で量産が走るわけではないと整理しておく必要があります。
2nm世代の第1陣は本年中に立ち上がる見込みで、多くの顧客はN2およびN2Pにとどまるとされています。ウェハー供給のひっ迫が続くなかでも、TSMCは多数の顧客からの注文をさばきつつ、ライバルのSamsungを引き離すためにキャパシティ調整を進めているとされています。
1nm量産は2030〜2031年か——Longtan Phase IIIが鍵
1nmの量産前倒しは期待しにくい状況です。DigiTimesは、Longtan Phase III拡張プロジェクトに伴う用地取得プロセスは2029年に始まる見通しで、量産開始は2030年か2031年より早くは始まらない見通しだと伝えています。
- 建設中の拠点数: 12
- 12拠点で対応予定の先端ノード: 2nm(N2/N2P)、A14(1.4nm)
- 1nm: 上記とは別枠で「準備段階」、用地取得は2029年開始予定
- 1nm量産開始の見通し: 2030年または2031年より早くは始まらない可能性
なお、Samsung側も2029年に1nmウェハー生産を開始することを目指しているとされており、Samsungの積極姿勢がTSMCに前倒しの準備を促した可能性があるとも指摘されています。
Samsungの壁は微細化ではなく歩留まり
Samsungは米国における2nm生産拠点の設置という観点ではTSMCを上回ったとも伝えられています。一方で、Wccftechは、Samsungにとって最大のハードルは次世代プロセスへの到達そのものではなく歩留まりの安定化だと整理しています。
過去の報道では、2nm生産に踏み込んだ後も、Samsungは顧客から「TSMCの代替」ではなく「バックアップの選択肢」と見なされている状況が続いていると伝えられています。歩留まり改善が進まなければこの構図は変わりにくく、SamsungがWccftechの整理によれば2nmに長くとどまる方針とされるのも、リソグラフィを安定させて顧客を呼び戻すための時間軸を確保する狙いがあると読める、との見方もあります。
この情報をどう受け止めるべきか——公式発表ではない点に注意
ここまでの内容は、TSMCが公式に「1nmを何年から量産する」と発表したものではなく、DigiTimesの報道をWccftechが整理したものに基づいています。Longtan Phase IIIの用地取得開始(2029年予定)という1点が、量産時期の根拠として置かれていることには注意が必要です。
テックリテラシーの高い読者にとっての具体的な意味合いを言えば、AppleやNVIDIAなどTSMCの主要顧客が1nm世代のチップを採用する製品サイクルは、今回の報道どおりなら2030〜2031年以降に位置することになると読めます。それまでの数年間は2nm(N2/N2P)とA14(1.4nm)が現実的な最先端ノードとして残り、ハイエンドSoCやAIアクセラレータの設計判断はこの範囲で続くことになります。AIインフラ需要の強さを踏まえると、続報、特にTSMC自身からの公式ロードマップ更新や、顧客側のテープアウト発表を追う価値は高いといえます。
A14(1.4nm)の建設進捗——Taichung・Fab 25で2027年リスク生産へ
1nmの先を見通す前に、その手前のA14(1.4nm)の進捗状況も具体化してきています。報道によれば、TSMCはA14(1.4nm)の量産を2028年に計画し、リスク生産は2027年を狙っているとされています。Fab 25と呼ばれるこの新拠点は台湾中央サイエンスパーク(Taichung近郊)に位置し、推定485億ドルを投じて4棟構成で建設される計画です。
A14世代の主なスペックとロードマップ
- N2比でロジック密度23%向上
- 同電力で10〜15%の性能向上、または同性能で25〜30%の電力削減
- 初期版はバックサイド電源(BSPDN)非搭載で2028年量産入り
- バックサイド電源付きA14版は2029年に投入予定
A14は2028年に量産入りするものの、初期版はバックサイド電源を持たず、BSPDN対応版は2029年に分けて投入される構図です。1nm量産が見込まれる2030〜2031年の手前で、A14世代だけで複数のバリエーション展開が想定されており、サブ2nmからA14、そして1nmへと続く微細化のステップが段階的に積み上がる時間軸となっています。
N2世代の顧客構成と価格——約15社が設計中、ウェハー$30,000の重み
1nmの先を語る前提として、目下立ち上がるN2世代の商業的な姿も把握しておく価値があります。報道では、N2には約15社の顧客が設計中で、そのうち約10社がHPC顧客とされています。寡占の度合いも明確で、AppleがN2初期キャパシティの過半を確保し、A20/M6/Vision Pro R2向けに割り当てられると伝えられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| N2設計中の顧客数 | 約15社 |
| うちHPC顧客 | 約10社 |
| ウェハー価格 | 約$30,000 |
| 3nm世代からの上昇幅 | 50%以上 |
| N2キャパシティ計画 | 2026年に月10万ウェハー、2027年に月20万ウェハー |
ウェハー単価が3nm世代から50%以上跳ね上がり約3万ドル水準に達するなか、初期キャパシティをAppleが押さえる構図が固まりつつあります。月産10万ウェハーから20万ウェハーへの拡張ペースが、サブ2nm時代の「枠の奪い合い」を物量面で支える構造になっているといえます。
Q&A
Q. TSMCの1nmはいつから製品に載るのですか? DigiTimesの報道によれば、1nmの量産は2030年または2031年より早くは始まらない見通しです。Longtan Phase IIIの用地取得が2029年開始とされており、そこから逆算した時間軸となります。
Q. Samsungとの差はどれくらい開いているのですか? 1nmの量産開始目標年次だけを比べれば、Samsungも2029年に1nmウェハー生産開始を目指しているとされ、年次のうえでは大きく離れていません。ただし2nm世代の時点でSamsungは顧客から「TSMCの代替ではなくバックアップの選択肢」と見なされていると伝えられ、Wccftechは課題は微細化そのものではなく歩留まりの安定化だと整理しています。数字上のロードマップより、量産品質の差が顧客の選好を分けている点が重要だと読めます。
出典
- Wccftech — TSMC Goes Full Throttle On Ultra-Advanced Nodes, Leaving Samsung In The Dust As It Begins Plans For 1nm Production
- OC3D — TSMC accelerates its A14 node (1.4nm) production plan
- Wccftech — TSMC Initiates Work on the 'World's Most Advanced' Chip Fab, Worth a Whopping $48.5 Billion for High-End 1.4nm Process